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ページ20

「待って、これ、どういうことなの」


「……ほんま、ありがとうな」


「センラっ」




彼のその涙の意味も。悲しそうに微笑む理由も。私がここにいる意味も。
全てが分からない。理解が出来ていない。


なんだか、頭が回らなくなって。
あ、もう終わりなんだって直感的に分かった。



折角、思いを伝えたのに。お互いの気持ちが分かったのに。
なんで離れなくちゃいけないの?

そんなこと思ってもタイムリミットはすぐそこまで迫ってきていて。





「……生きて、ちゃんと生きて幸せになって」


「…幸せになってってどういう…っ!」




呟いた私の言葉は彼の唇によって遮られた。
突然の事に頭が真っ白になる。



名残惜しく離れた それ。

彼は私を見つめたまま、綺麗に微笑んだ。目には涙を浮かばせたまま。



「……A、元気で………」


彼の言葉が遠くになるのを感じながら私は意識を手放した。









パッと目を開けて真っ先に見えたのは白い天井。
そして視界の端から高校からの友達であるモモが見えた。



「A?A!!!」


「ん……、モモ?」



その瞬間、バッとモモに抱きしめられた。
そして、離れた時にはモモの目には涙が溢れていて。





「良かった……もう目覚めないかと思ってた」


「え?私、一体どうして……」


「Aね、交通事故に巻き込まれて意識不明で生死を彷徨っている状態だったんだ。目が覚める確率も半分で……、本当良かった…」


「センラは?」




彼の名前を出した途端、モモは表情を歪ませた。




「……もう、いないよ」


「え…?」


「伝えるのが遅くなってごめん。あいつは、Aが引っ越してからすぐに死んだんだ。海で溺れている子どもを助けようとして」


「嘘だ……」


「嘘じゃない。言おうと思ってたんだけど、引っ越して大変な時期になかなか言い出せなくて。……言うのが遅くなって、ごめん」


「……嘘だ、だって私センラに…」






“……ほんま、ありがとうな”

“……生きて、ちゃんと生きて幸せになって”




さっきまで一緒にいた彼の声がすぐ耳元で響く。



センラが実はこの世を去っていた、ということを知り全てが納得できた気がした。
けれど、やっぱり辛いものは辛くて。


気づかない間に流れていた涙を拭う。


引き止めて、くれてたんだね。




ありがとう、と心で呟き窓を見た。
聞こえるはずの無い、あの時の波の音がどこか遠くで聞こえたような気がした。



fin.

かき氷。→←*



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作者名:高瀬その | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2018年6月26日 21時

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