才能なんてないから(2)

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「今回の試合、別にAくんにしか出来ないことって無かったと思うんだよね」

僕は何も言い返すことが出来なかった。だってそれは僕が思ってることと同じことだったから

僕は"雰囲気を変えてこい"と言われて試合に出た。けど僕が出たところで雰囲気は変わってないし、変わった時も変えたのは僕じゃなかった

スパイクやサーブで点をとっても僕だから取れた。とは言い難いだろう。それにミスだってしていた。

僕が試合に出た意味はほとんどなかった。そのままコートから下げられなかったのもまた、平均的にできるから。それと経験を積ませるためかもしれない

「烏野は得意分野がはっきりしてるチームだと思うよ、その中で目立って上手いものが無いAくんがスタメン入りは難しいかもね」

なんとなくこのことは気がついていた。これだけは誰にも負けないという特別なものが、日向であれば変人速攻だったり山口で言えば練習中だけどサーブだったり。

それがない僕はコートにいる場所なんてない。だってそれは僕にしか出来ないことでは無いんだから

「もちろん、オールラウンダーは必要だし大切だ。それがいけない訳ではないよ。ただ、Aくんはね」

ガチャリと扉の開く音が聞こえた

そして扉の開いた先では、「飲み物とお菓子もらってきたー！」と先程出ていったたけるくんが戻ってきた

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