6話 ページ8
終止符を打ったのは、今私がもたれかかっているこのソファだ。
いっつ...と軽く打った背中を擦りながら再び前を向く、と、そこには、いかにも正気じゃない目をしながら震えている銀時の姿が。
思わずひぃっと声が漏れる。
「銀時、私ちょっと潔癖症なとこあるからさ、勘弁して欲しいんだけどさ。ね、聞いてる?あ、聞いてない。聞いてお願い。
私がこんなに銀時に懇願する事なんて今ぐらいしかないんだよ?ねえ、少しは聞いてくれてもいいじゃない。ね。
おぉい、お願いだから聞いて。聞けや。」
きっと、これが私の中の今世紀最大の早口だったと思う。
しかしそんな私の懇願は銀時には届いていないようだ。
がばっと両手を広げ、ゆっくりと口を開く。
ああ、もうおしまいだ。
仮面なんて取るんじゃなかった。じゃあね、私の純潔な身体。
私は最後、銀時がこちらにもたれ掛かる気配に、ぎゅっと目を瞑った。
「やべぇ、飲みすぎて幻覚が見えるようになっちったよ...」
頭上から聞こえたその声の後、
ソファがギシリと軋む音と、暖かい体温が私の身体を包むような感覚に恐る恐る目を開けた。
目を開けると、頭の横にはふわふわとした銀髪が乗っかっており、肩には太く鍛え上げられた腕が巻きついていた。
私が恐れていた吐瀉物等ではなく、人のちゃんとした暖かみが服越しに伝わってくる。
「銀時...?」
一体、これはどういう状況なのだろうか。
その時、玄関の扉がガラガラガラと開く音が聞こえた。
ドタドタドタとこちらに走ってくる足音がした後に、ピシャンと応接間の扉から入ってきたのはメガネくんである。
探し回ったせいか、汗だくで膝に手を当てて項垂れている。
「待たせてごめんなさい...!」
そう言うと項垂れたまま、すいません銀さんが...と申し訳なさそうに喋り出す。
...何か嫌な予感がする。
「銀さん見つかりませんでし...」
メガネくんがぱっとこちらに顔を上げた時、私の目とメガネくんの視線が交差した。
仮面を付けていない私の顔と銀時の顔を交互に見ながら、メガネくんの瞳が大きく見開いていく。
それ以上は開かないよ、って所まで目を見開ききったメガネくんは、先程の銀時同様わなわなと震えだした。
ここの人達は驚いたらわなわな震え出す習性でもあるのだろうか。
「あの...とりあえずこの人ひっぺがしてくれませんか。
なんか凄い力で押さえつけられてるんです。助けて下さい。」
「こっ、この色情魔ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時