12話 ページ14
まあよく分からないが、そこまで言うメンバーなのだから
期待しておく事にしよう...
というかもう他の業者に他の見に行くのも億劫だし。
もうここでいいか、と諦め半分なのである。
「もういいよ。わかった。
じゃあこれに吹き込んで。」
そう言って嫌々ながら銀時に吹き込んでもらったテープレコーダーを
回収した。
「じゃあまた明日、万事屋に来るので宜しく御願いします。」と
扉に向かって歩き出した時、
不意に腕を掴まれる。
私の腕を掴んだのは、銀時だ。
あまりに突然だったので驚きながら、
どうしたの、と聞くと、俯きながら銀時は
もう片方の手で頭をかいた。
「お前、今何処に住んでんの。」
「...え、あ、私?私江戸に来たばっかりで
まだ家が何処にあるか見てないんだよね。
...分かったら、明日にでも教えるよ。」
そう言うと、おん、と小さく呟くように言うと
ゆっくりと掴んでいた手を離した。
そのあとは普通に新八くんと銀時に挨拶をして
そのまま外に出たのだが(勿論仮面は着用済み)、
さっきの銀時とのやり取りが頭の隅で引っかかって、なかなか取れなかった。
***
先程万事屋から出てくる前に、銀時に言われた自分の家について
歩きながらゆらゆらと考えていた。
事務所同様、知り合いの不動産屋に言って借りさせてもらった
アパートの一室がある。
攘夷志士や真選組に身元を洗われない為になるべく安い家賃であまり新しくないアパートを借りていた筈だが、今はまだ行く気にならなかった。
なぜかと言われれば、とある"生理現象"が原因である。
「...お腹減った」
ぐぅ、と鳴った自分の腹の音が私の空腹状態を表していた。
思い返してみれば、江戸に着く前から今の今まで何も食べていない。
元々若い頃はあまり食べなくても平気な体質の私だったが、
この歳になるとさすがに何かを食べなければ辛い。
どこか、喫茶店などに寄って何か軽食でも食べてしまおうか。
食事処を探し、周りをきょろきょろと見渡した。
その間にも、周りを行き交う人達の視線は仮面を付けた異様な私に向けられている。なんだか、息苦しい。
よく都会人が、都会は息苦しい等ということがあるがこういう事だろうか。
...いや、多分違うだろう。
そんな事を考えている間にも刻々とお腹は空いていき、
再び腹の虫が鳴る。
ぐるりと辺り一帯を見渡したが、食事処らしき店は見受けられなかった。
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作者名:花流 | 作成日時:2019年2月11日 15時