11話 ページ13
折角の契約書が黒い炭となって床に散らばってゆく。
摘んでいた部分の契約書の隅だけが、銀時の掌の上に残った。
黒い炭を見ながら呆然とする私を申し訳なさそうに眺める新八くん。
そんな中、薄ら笑いで｢サイン｣と私の肩に手を置いた銀時の方を向くと、小さい紙切れを私に手渡した。
小さい紙切れに目を凝らすと、いつの間に書いたのか小さく細い字で"坂田銀時"。
｢...もっとよく考えて行動しようよ、大人なんだから。｣
深い溜息をついた私に、｢ごめんなさい｣と謝ってくれる新八くんに対して、
鼻に指を突っ込んでいる銀時。
ほんと、馬鹿だなあ。
｢そもそもんな紙切れなんて意味ねーだろ心配すんな俺達口硬いから、なっ新八｣
｢いやお前が1番口軽いんだろが！！｣
そんなやり取りをしている2人をほっといて、
私は懐に再び突っ込んだ。
巾着袋を手で掴み、紐を解いて開く。
その中に入っている長細い物を取り出すと、
言い合いに発展している2人の前にそれをずいっと突き出した。
｢Aさん、それって...｣
｢テープレコーダーだよ。
契約書は今手持ちにないし、これに契約の内容に従う有無を吹き込んでくれたら
もうそれで大丈夫。
そもそも契約書なんていう面倒臭い処置を促してるのは私の方だからね。
2人を信じてないわけじゃないんだけど、これは昔からのルールだから...。｣
｢まあ...それなら、ねえ銀さん。｣
｢あー？あぁ、うん。｣
｢了解。はい、じゃあこれ。
一応、社長である銀時が吹き込んで...
あっ、ちょっと待って｣
そこで、1番重要な事を思い出した。
事務所の掃除を行うにあたって、この...万事屋2人だけだと少し
心もとない部分がある。
そもそもこの万事屋は何人が勤務しているのか把握しなければならない。
これも、仕事でのヘマをなくすための予防線だ。
｢あの、万事屋で働いてる人達って、新八くんと銀時含めて何人なの？｣
｢...3人｣
｢え？｣
｢3人｣
｢え、3人？少なくない？｣
｢3人っつってもあれだぞおめー、そのうち1人は1人で100人分ぐらいこなす秀才だからよー、新八がマイナス50人分だとしても51人分はあるから心配すんな。
なっ、マイナス50人分｣
｢なんで僕がマイナス50人分なんですか！！それを言うなら銀さんでしょ！！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花流 | 作成日時：2019年2月11日 15時
