episode.88 ページ45
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「あんたっ!ふざけんなっ」
あの後、私達はすぐに日本に送り届けられた。私達の1週間にわたる家出生活に幕が降りた。
日本に着いた時には既に瑞希の両親は空港にいて、上の言葉は瀬名さんが月永さんに飛びかかった時の言葉だ。
「ふざけんなよっ、俺たちがどれだけ心配したと思って…!連絡くらいしなよねぇ、ばかっ」
「……ごめん、セナ」
「ほんとだよ!!」
瀬名さんは大の字になった月永さんの上に跨って、何度も何度も殴るのを我慢して、涙を流していた。
その間、瑞希はお母さんに抱きしめられていた。その光景を私は薫さんと一緒に見ていて、なんだか羨ましく思った。お母さんに、お父さんに大事にされている瑞希がいいなと思った。
瀬名さんはすぐに瑞希の方に戻って、安心した様子で頭を撫でた。
「パパ、__いや『瀬名泉』さん」
意思のこもった瞳で瀬名さんを見つめた瑞希は、旅する前の瑞希とはまるで違っていた。
「俺、あんたを超えるスーパーモデルになってみせるから、これからもご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします」
目を見開いて驚いた瀬名さんはすぐに優しい笑顔になって「楽しみにしてる」そう言った。
*
「Aっ……!」
遠くから聞こえる声。私を大事にしてくれている人の声だった。
乱れた髪で、汗が滲んでいて、目の下に隈を作っているこの人は紛れもなく私のお父さんだった。
「お父さん…」
「良かった…っ…良かった……生きてる、ちゃんと生きてる」
震える声で、震える腕で抱きしめてそう言ったお父さん。私が生きているのを確認するようにぎゅっと抱きしめる。
その震えた声に呼応するように私も涙が出てきて。
「心配かけて…っごめんなさい。私、お父さんに迷惑かけてばっかりで…、お母さんのこともごめんなさい…っ」
「お母さんのことはAが気にする必要はない、我輩はAが生きて、ただ笑ってくれているだけで嬉しいからのう。だから、もうお願いじゃから勝手にどこかに行くのは辞めておくれ。
あと、毎年寂しい思いをさせてすまんかった。Aの気持ちを考えてあげられてなかった我輩の責任じゃ。本当にすまんかった」
「ううん、お父さんは何も悪くないよ。私、もう勝手にどこかに行かないよ」
お父さんの温もりが優しくて、私はずっとここにいてもいいんだと思えた。
「A、お家に帰ろう」
「……!うん」
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時