episode.80 ページ34
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「……」
黙ってしまった瑞希は、居心地が悪そうに顔を顰めた。
「おまえは、モデルに向いてるよ」
「…!」
「仕事が上手くいかない、上手くできない、自分はモデルに向いていないのかもしれない、そんな風に思ってるのかもしれないけど、そんなのその時たまたま上手くいかなかっただけだよ。おまえが向いてないわけじゃない。」
「……」
「だって、このステージを見て、すごいって目を輝かせてるおまえが、モデルに向いてないはずがないだろ!その仕事が「好き」って思えること自体が才能なんだよ、ミズキ」
「……」
それでも、不服そうに悔しそうに口を噤んだままの瑞希を見て、月永さんは優しく微笑んだ。
「セナだって、全てが上手くいってた訳じゃない。むしろ、上手くいってないことの方が多かったはず。
おれたちは、19の時にこの舞台に立った。おまえたちが生まれる前だ。おれはこうして関係者として呼ばれるけど、セナはそれ以降このステージには呼ばれてない。10年以上1度も。
決して、おれたちが失敗したわけじゃない。Knightsとして個人として名前を売ることが出来て、むしろ、成功したと言っても過言じゃなかった。だけど、あいつはあれから1度も呼ばれてない」
そこまで言って、月永さんは瑞希の顔を見た。驚いた顔をした彼は信じられない、という顔をしていた。瑞希にとって『瀬名泉』というモデルは特別で偉大で、挫折を知らなくて、自分には到底手の届かない存在だったのだろう。普通に考えれば、そんな人いるはずがないのに。
「高校を卒業して、海外で活動を始めた時なんて、セナの仕事はほぼおれがあげてたものだったし、ミズキが思ってるような順風満帆な人生を歩んでないぞ、セナは。」
「…でも、パパは俺に呆れて…」
「呆れてなんかない。セナが何も言わなかったのは、言えなかったからだよ。別に言うことじゃなかった。この業界、キャストの変更なんてよくある事だ。前まで自分が受けていた仕事をいつの間にか他のやつがやってる、なんてよくある話。怒るなんて、もってのほかだ。
1番傷ついてるのは、ミズキだろうし、そんなことセナだって分かってる。慰められても、それはそれで嫌だろ?」
「自分がそうだから、何も言わなかったんじゃないか?」と笑った月永さんは、本当にこの家族のことが大好きなんだろうなって思った。
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時