episode.71 ページ25
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「私、お水汲んでくるね」
「ありがとう」
あれから、お父さんが仕事の調整をしてくれたり、学校と掛け合ったりしてくれて、だいぶ体の負担が少なくなった。前より息がしやすくなった気がする。
そんな今日は、年に1回のお母さんのお墓参りにやってきた。毎年この時期に来るんだ。ここに来るまでに、お線香やお花を色々と買ってきた。
桶に水を汲んで、お墓の方に移動すれば、お父さんはお墓を掃除している最中だった。
……あれ?お花、新しい?私は1年ほどお墓参りには来れてない。お花は枯れててもおかしくないのに、まるで最近__ここ1週間以内に取り替えたかのようにお花は華々しく咲いていた。
赤い菊と白いカーネーションを基調とした綺麗なお花だ。
「じゃあ、お花取り替えようかの」
「うん。お花、綺麗だね。誰か来たのかな?」
「そうかもしれぬ。お母さんはお友達が沢山おったからのう。ちと変えるのは申し訳ないかのう…?」
「んー、枯れてるやつだけ取り替えようよ」
それから、線香をあげて、合掌した。
お父さんの合掌はいつも長い。沢山、たくさん、話すことがあるのだろう。
しばらくして、お父さんが顔を上げる。
「そろそろ、行こうかのう」
「お父さんっていっつも何話してるの?」
「Aがこんなに大きくなりましたって報告しておるんじゃよ。天国のお母さんも喜んでおるわい」
「ふーん」
*
その後、ふたりでお蕎麦を食べて、ちょっと買い物して家に帰った。
「A、来週、我輩、ちと家を空ける予定じゃから、凛月の家に行っててくれるかえ?」
「………わかった」
「どのくらい?」と聞けば、「3日くらいじゃよ」と返ってきた。お父さんが家を空けるというのはおそらく"嘘"だ。長年の私の勘がそう言ってる。だって、お父さんが家を空ける日って毎回『お母さんの命日』と被ってるんだもん。毎年毎年同じ日に「家を空ける」と嘘をついているんだ。さすがに気づく。
正しくは、『家を空ける』ではなく、『家に1人にしてくれ』だ。だから、私はその期間は凛月くんや薫さん、晃牙くんのお家に泊まりに行ってる。今年は晃牙くんの家は絶対にないけど…。
私は、『知らないフリ』をして、「いいよ」って言うんだ。お父さんはお母さんのことが今でも大好きだから、愛しているから。1人で泣いていたりするのかもしれない。
この時期はちょっと憂鬱になる。
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時