episode.70 ページ24
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「ヒック…っごめんなさいッ、お父さん…」
その返答として私の涙を指で拭って、目を細めて笑ったお父さん。
「謝る必要は無い。Aは何も悪いことはしてないからな。」
「…うんっ、」
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「A、無理する必要は無いからのう。少しお仕事の量減らそうか。」
「うん、…出来るのなら」
「お父さんを誰だと思っておるのじゃ。大丈夫じゃ、Aは心配しなくて良いよ」
そう言って、笑ったお父さんは、
「そろそろご飯を食べようかのう。準備手伝ってくれるかえ?」
「うん!手洗ってくるね!」
*
そう言って元気に洗面所に駆けていったAを見つめた。なんとか、あの子の気持ちを少しでも和らげることができたようだ。
Aが『普通』の子として、生きられるように気をつけてきた。母がおらず父子家庭であること、(自分で言うのもあれだけれど)『朔間零』が父親であること、身内に芸能界で活躍している者が多いこと___そんな特殊な環境の中で育てられて、あの子も苦労が多かったはずだ。
それに加え、Aは自分から見ても多くの才能を持っている。少し勉強すれば良い点を取れたし、少し練習をすれば習い事もすぐ上達した。
芸能界に入ってしまえば、あの子の才能が解き放たれて、大変なことになることは目に見えていた。だからこそ、半端な覚悟でできるようなものでは無いと、遠ざけてきた。
それが、以前のモデルうんぬんの事件を引き起こしてしまったのだけれど。覚悟があるなら、止めやしない。むしろ、応援したいと思っている。
家の外では『特別な子』として扱われていても、この家の中では、Aにはのびのびと過ごして欲しかった。年相応の振る舞いをして欲しかった。それは、昔、自分が『特別な子』として扱われ続けたせいなのかもしれない。あの子には同じ目には合わせまい、と。
今回の事件も何度もすぐに助けたかったけれど、『自分が手を差し出せば解決はするけれど、助けた者の成長はできない』ということを身に染みて思い知っている。だから、少し様子見を行っていたのだ。
天ぷらを揚げ終わると、Aがそれをお皿に乗せていってくれている。その顔はさっきとはうってかわって晴晴としていて、思わず笑みがこぼれた。
「なに?」
「んーん、Aはかわゆいのう…と思っただけじゃよ」
「ははっ、なにそれ」
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時