それくらい知ってます。【歌い手】 (ページ14)

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13話ページ14

夢主side

どういう意味なのだろうか。

『それって、どういう...』

素直に先輩に尋ねると

｢だから...！！

真冬のこと好きでいるのが辛いなら、
俺を好きになれよ...っ！！

俺は、
こんなにお前のことが好きなのに...っ！！｣

そう言って俯く先輩。
きっと泣いているのだろう。

先輩がこんなにも私を想ってくれていたなんて知らなかった。

いや、知ろうとしていなかったのだろう。

思えば、デートのときも、話している時も、
私を気遣ってくれて、沢山笑わせてくれた。

だから先輩といる時だけは、真冬を好きでいる気持ちを忘れて、素直に楽しむことが出来たのだ。

そんな先輩の気持ちに気づかないなんてなんて自分は最低なんだ。

『先輩...、私もう、やめます。』

｢え...っ？｣

『私は、先輩が好きです。』

真冬が他の子といるのを見ると苦しくなる気持ちも、

真冬が笑いかけてくれるだけで嬉しかったあの気持ちも

全部全部、

これから先輩に向けよう。

きっと、今までだって先輩への気持ちを真冬への気持ちだと勘違いしていただけだったんだ。

自分に言い聞かせるようにして、
私は先輩に微笑んでみせた。

先輩の顔はだんだん赤くなってきて、
一瞬止まったと思った先輩の涙はまた溢れていた。

｢俺も、好き。｣

そう言って私を抱きしめる先輩。

『はい、これからは正式にお付き合いしましょうか』

｢うん...｣

首元に顔を埋め、また"好きだよ"と呟く先輩。

これがきっとハッピーエンドだ。

誰もが幸せになれる選択なんだ。

真冬といて幸せだったあの日々は、もう捨てよう。

これからの私の幸せは、
彼方先輩がいてくれる事。

ただそれだけだから。