56話 ページ8
「こいこい」
【ナツキさんの勝ちです】
「こいこい！」
の機械音と家族が騒ぐ声が後ろから聞こえる
さすが夏希姉
栄おばあちゃんに鍛えてもらった成果を見せてもらわなくちゃね
「夏希先輩すげぇ、こんな短時間で30万以上のアバターを取り戻した｣
って声が聞こえたけどその中にはまだこちらが有利になるアバターが含まれていない
｢こいこい｣
額から汗が流れ落ちる
どんどん緊張感が高まっている
そんな中でも
カチッカチッと1秒1秒時間が減っていく
少しでも早く作業を進めないとと
どうしても焦る気持ちが先走る
隣の侘助さんの進捗具合も見ている暇はない
極限状態まで達し周りの音が何一つ聞こえなくなっていた
キーボードを叩く音
家族の声
みんなが戦っているブラウン管テレビの中でのゲーム音
夏の音
何もかもが聴こえない
ただ解体するのに必要なものしか見えていない
これを俗に言うゾーンと呼ばれるものだと後で気がついた
今ならなんでもできる気分になる
もっとアバターを集める方法も同時並行でできるはず！
どんどんスピードが上がっていく
周りの状況に気づかない程に
夏希姉の危機に直面していて
アバターを集める方法が成功していることにも気づかない
ただできると信じているから気づかない
どんどん息が粗くなる
自分の呼吸しか聴こえない
はぁ…はぁはぁ…はぁっ…はぁっ
だんだん過呼吸に近くなる
はぁっ、はあっ…はあっ…はぁっ
あと少し…
｢紗奈！｣
｢はっ！｣
肩を揺らされて力の方を見ると
佳主馬が焦ったような顔で私を見ている
佳主馬｢過呼吸になってる｣
紗奈｢…え｣
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作者名：りーにょ唯月 | 作成日時：2020年9月8日 18時
