嘘 1 ページ3
「巫山戯るな!! 俺を誰だと思っている!?」
突如、怒鳴り声が響いた。
「この身の程知らずが!!」
男が、唾を飛ばしながら喚いている。
『申し訳有りません…!!』
女が、必死で謝っていた。足元には大量の紙が散乱している。
「終わったな、彼奴。」
「俺じゃなくて良かった……」
その二人を、野次馬と化した構成員が取り巻いていた。
(嗚呼、面倒な事になったなァ……。)
女ーーAは、心の中で溜息を吐いた。
何年ぶりだろうか。久々の失態に、頭が痛くなる。
***
(間に合わない……!!)
Aは焦っていた。今日提出する筈の書類が提出出来ていなかったからだ。
上司に頼まれた仕事が中々厄介な代物で、それを片付けるのに思いの外時間がかかった事が原因だった。
やっとの事で片付け終わると、締切間近の書類があった事に気が付いた。ギリギリて終わらすと、執務室までの廊下を走っていた。
そこで向かい側から歩いて来た男とぶつかって……今に至る。
***
「俺は準幹部だぞ!?」
男は、尚も怒鳴り続けている。
一方Aは平謝りしながら、全く別の事を心配していた。
(……治、来ないといいんだけど。)
「さっきから五月蝿いんだけど、何?」
不機嫌そうな、冷たい声が響いた。ざわざわしていた廊下が、一瞬で静まり返る。
最年少幹部・太宰治が立っていた。
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作者名:レトロ | 作成日時:2017年7月16日 10時