策士な彼の愛は重い【そらる】

あの夜 ページ37

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「あんの馬鹿上司、本当にムカつく！」



はいはい、と聞き流す俺の肩をぐらぐら揺らして「聞いてんの！？」と面倒臭い絡み方をしてくるA。

俺が合流した時にはもうすでに酔っていたしいつもよりペースが早い。


話を聞く限り、上司が若くて可愛い子のミスを怒れずにAが代わりに怒られたらしい。

なんとも酷い話。



「はぁ、本当にこれで何回目？私はちゃんと仕事やってるんですけど！」


「うん、偉いよ」


「もういい、やめる！会社辞める！」



今回のは相当やばいかも。

ジョッキを一気に飲み干してダンっとカウンターに置いた。


さらにおわかりを頼んでいてもうダメだと腹を括った。

今日は俺が送ることになるだろう。



「A、帰るよ」


「やだまだ飲む」


「もう十分飲んだでしょ」


「まだ飲み足りない！」



ほらこうなる。

Aがこんなに酔ってるのは久々に見た。

ちゃんとセーブしながら飲むタイプだし、前に「記憶なくすのが怖くてたくさん飲めない」と言っていた。

どこがだよ。
これは記憶なくすレベルだよ。



「ほら、手回して」


「やだやだ」


「いてーよ離せ」



無理やり手を回させると俺の頬をぐいーっと引っ張る。

まるで3歳児の相手をしてるみたいだ。


埒が明かないからぐっと腰を抱いてそのまま店を出る。

Aの家は近いけどこんな状態で歩ける訳もなくタクシーを拾ってAの家に向かった。





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