四十二話 ページ46
部室を出る前、遊木くんに｢どうしたの？｣と問われ、適当に｢先生に呼ばれてるの忘れてたから｣と嘘をついて出て行った。
顔色が優れないよ？などと言われた記憶があるが、それは気のせいだと思い込んだ。
特に意味もなく私は歩き続け、ふと足を止めれば、学院の屋上に来ていた。
フェンス越しに見る学院。
こんなにも綺麗なのに、中身はドロドロとした汚いなにかが纏っている。
生徒会長がいなくても、空気が悪いと思うなんて。
｢はあ…｣
｢はぁ……｣
ふと声が重なる。
同じタイミングで溜息が被り、私のその聞こえた方へと顔を向けた。
隅っこの方で体育座りをして蹲っている少年が一人。
手と黒のカーディガンの隙間から見えるネクタイの色からすると、きっと一年生だ。
具合でも悪いのだろうか、溜息が絶えない。
大丈夫だろうか、私は恐る恐るその子の元へと歩いた。
｢だ、大丈夫…ですか？｣
｢へ…？え、っ…！？｣
そっと肩を叩けば、彼は慌てて顔をあげた。
ものすごい動揺していて、逆に私も慌ててしまった。
だけど、この子は何処かで見たことがある。
｢うわ…すみません、だ、大丈夫です……ほんとに、うう……鬱だ｣
｢え、ほんとに大丈夫……？｣
大丈夫なのに、鬱って。全然大丈夫そうに見えない。
膝の上に頭を乗せ茶髪が揺れるほど頭を縦に振っていた。
特徴的な翠色の瞳を伏せ、体格のよさげな体を無理やり縮こませ、なんだか小動物みたいだと思ってしまった。
｢高峯……翠くん、だよね？｣
｢え、なんで俺の…｣
｢僕のクラスにバスケ部の部員がいるんだけど、そのうちの一人がこの間喋っていたんだ。一年生に高身長の奴がいるって。｣
ふと思い出した名を呼べば、彼は驚いたように肩を揺らした。
恐る恐る上げられた顔を見つめれば、一瞬でそっぽを向かれてしまった。
なんの許しもないが、私はそっと彼の隣へと腰を下ろした。
ああ、勿論、人一人ぶんの隙間はある。
私の言葉に再び『鬱だ』なんて呟いてたけど、何が鬱なのか、私は聞いてみようとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斉賀(プロフ) - 作品とっても面白いです！朔間さんカッコいい応援しています。 (2018年9月23日 23時) (
レス) id: cc12e08766 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - 夢花さんコメントありがとうございます。そしてすみませんでした；；あながちと読むんですが、どうやら変換ミスをしてたようです；すみませんでした！反省の意を込めて一度棺桶に入ろうとおもいます！ (2018年9月22日 21時) (レス) id: 859ce7d0e7 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - 夜月さん» 夜月さんコメントありがとうございます！とても嬉しいです＾＾そして、ダイヤがない時は魔法のカードに頼るのがよいのでは？（笑）← (2018年9月22日 21時) (レス) id: 859ce7d0e7 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - うん…まあ確かに人が棺桶から出てくるのはシュールだね……ww想像したら笑えてくるなコレw (2018年9月22日 19時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 作者さんに質問です。十二話の「間違ってはいない」の前の文字はなんと読むのでしょうか…コピペして調べてみたのですが、その後に「間違っては」とついても違和感のない読み方が分からなかったのと、このスマホではこの漢字が認識されませんでした。 (2018年9月22日 18時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：丸 | 作成日時：2018年9月15日 2時
