ここから始まる二人

番外編　Yの証人 ページ21

sideY



人の心なんて、分からないものだ。




「おはよ、よこーさん」
「あ、みつおはよう」



眠そうに入ってきたみつはそのままソファーに寝そべり、ウトウトと船を漕ぎ始めた。

主演舞台も一段落してドラマもクランクアップしているから今はスケジュール的にはそんなにキツくないようだけど、ありがたいことに雑誌やレギュラー番組の収録、ラジオと仕事は日々あるから慢性的に睡眠不足なのは仕方ない。
眠れるときに眠れるのはみつの羨ましい長所だ。



「昨日寝るの遅かった？」
「…ん？あー…、まぁ…ちょっとな」



歯切れの悪い答え方が気にはなったものの、少し寒そうにしていたから暖房の設定温度を静かに一度上げた。



「あんがと」
「いえいえ、風邪引かれたら困るからね」



まだまだ寒い日は続くから、寒さに弱いみつのことはメンバーみんな特に気に掛けている。
俺はもちろんのこと、特に過保護なのが…



「わーた、おはよう」
「太輔おはよう」



長年の片想いに見事終止符を打った親友、太輔。

恋人になれたよと密かに打ち明けられた時は正直少しだけ驚いた。
グループの事を思えば、かわいそうだけど片想いのまま太輔の気持ちが自然に風化されるまで俺がそっと支えてやればいいかな、くらいに思っていたのだ。

今はそんな風に思っていた頃が懐かしくなるくらい、二人の交際は順調らしい。



「…寝てるの？」
「来てそのままね。ちょっと寝不足みたいだよ」



太輔はそっと立ち上がり、持参していたブランケットをみつの身体に覆うように掛けた。
そしてソファーの前にしゃがんでみつの寝顔を眺めながら、優しい手つきで髪を撫で始める。

今朝は兄組だけの雑誌インタビューで弟組は来ないと分かっているからこその行動なのだろう。
二人の関係を知っているのは今のところ俺だけだ。

太輔はメンバーに隠し事をしたくないと言っているようだが、みつがどうやら躊躇しているらしい。
みつは多分、ずっと先のあらゆる可能性を考えた上で余計な気を遣わせたくない…と思っているのだろう。

そんな心配なんて必要も無いのに。

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