Tresure box 〜藤北〜

アイス ページ9

リアル。藤→北。恋人未満。ほのぼの



sideKi




たまに、藤ヶ谷の事が分からなくなる。



「…ん」
「ん？」
「…あげる」
「え、俺に？」



急に差し出されたソレを見て、思わず藤ヶ谷の顔と手に持っている物を交互に見た。
どういう意図で俺にくれようとしているのかさっぱり検討がつかず首を傾げると、早く受け取れとばかりに再度押しつけるように渡されて、意味も分からず受け取った。



「えっと…、ありがとう？」
「どういたしまして」
「でも何で？」
「……」
「あっ…」



理由を聞いた途端、藤ヶ谷はフイと目を逸らしてそのまま楽屋を出て行ってしまった。



「……何なんだ？」



後に残され訳も分からず、手の上に乗せている可愛らしいパッケージをマジマジと見つめる。

日本人なら誰でも知っている有名なアイスの新商品らしいことは分かったが、どうしてそれを俺に渡してくるのだろう。
これが似合うのはどう考えても俺なんかより渡してきた張本人だろうし、第一俺が甘い物をそんなに好きではないことは藤ヶ谷も周知のことだろうし…。



「…疲れているときは甘い物…ってか？」



そんなに疲れた顔を見せてしまっていただろうか…、少し反省しながら鏡と向かい合ってみるも今日はそんなに酷い顔はしていない。



「…もしかして、たちの悪い嫌がらせとか…？」



糖分の塊を口に含んで顔を歪める俺を遠くから見て笑いたいだけとか。
…いや、さすがにそこまで性格ねじ曲がってる奴じゃねぇしなぁ。

いくら考えても該当するような理由には辿り着かず、さてどうしたものかと頭を悩ます。
余計にたちが悪いのはこれが常温でも平気な菓子類ではなくアイスだということ。
考えれば考えるだけ溶けていき、どんどん悲惨なことになるのは目に見えている。



「…ま、せっかく貰ったんだしなぁ」



食べ物に罪はない、うん。
例えどんな理由にしろ毒なんて入っていないだろう。

藤ヶ谷がマイナスの意味でこれを渡してきたんじゃないことくらいは理由が思い当たらなくたって分かる。
ならばせっかくの機会だし、自分ではまず買わないであろうこの可愛らしいアイスを食べてやろうじゃないか。

口に入れた瞬間広がる甘さに苦笑していると、宮田が入ってきて驚いたように目を見張った。

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