Tresure box 〜藤北〜

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「で、バレンタインにそんな馴染みあるチョコ頬張ってる藤ヶ谷サンは誰に貰ったんですかぁ〜？」
「……バレンタイン？」



あ、そっか今日１４日…



「え、ガヤもしかして今日バレンタインって意識してないで貰っちゃったの！？
ダメだよー、その子めちゃ勇気出したんじゃない？」
「いや、くれたのあいつだし…」



同じ部屋で玉と楽しそうに話し込んでいる北山を指差す。
するとニカは驚いているようで、その反応にあれっと思った。



「…あれ、あいつメンバーみんなにあげたとかじゃないの？俺にポンって１個渡されたからてっきりみんなに配ってるんだと…」
「俺らだーれも貰ってないけど」
「え…？」



でもあの渡し方はみんなに配っているみたいなさり気なさだった。

…え、うそみんな貰ってないの？俺だけ？……何で？

ニカが横で何か言っているみたいだけど、俺の耳には入ってこず北山をジッと見つめた。
視線に気づいたのか北山がキョロキョロし始め、俺と目が合った。



「…っ」



びっくりした顔をして、それから少し照れたようにはにかんで、小さく俺に向けて手を振ってきた。







『……ま、あんま頑張りすぎんなよ』






「…ぁ」



チョコを貰ってしばらくしてから、ポツリと耳に届いた言葉を思い出した。
その瞬間、たった一粒のチョコレートに込められた意味を探したいような気持ちに駆られた。



ねぇ、ほんとに俺だけ？
何でも無い風を装って、俺が気づかないだろう渡し方を演出して、渡しただけで満足したの？
それとも、お前も今日がバレンタインって全然自覚してなかった？



その答えはこのチョコレートを渡された瞬間の顔を見ていれば分かったかもしれないのに、もうあの時間には戻れない。
真意を訊けばいいのだろうけど、なんか今更訊くのも恥ずかしい。
俺だけが意識していたら、それこそもう平然と一緒に仕事なんてできないだろう。



「〜〜っ、……ま…いっか」



考えすぎて考えすぎて、もう真意は曖昧のままでいいやと思った。

ただ、小さな気遣いに大きな幸せを貰った。
それだけは事実だ。

食べ終えた包みをヒラヒラと北山に見せると、北山は嬉しそうに目を細めた。







(…とりあえず、来月何かお返ししよ。)

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