Tresure box 〜藤北〜

糖分補給中 ページ15

リアル。恋人未満。藤→北。
ミュージックソン裏側。




sideKi




疲れた時には甘いもの。それから……






昨年に引き続きグループで任された２４時間メインパーソナリティーを務めるラジオ・ミュージックソン。
今は夜も深い時間、交代で訪れた仮眠という名の休憩時間。

楽しみながらやれていることは間違いないが、生放送が故に常に緊張を強いられる為身体への負担も大きい。
用意されている休憩室へ向かってはいるが、もう一歩も動きたくないと脳が訴えているのが分かる。



「…っ」



眠い、しんどい、気持ち悪い。

フッと気を抜けば今にも崩れ落ちそうな身体をギリギリの状態で動かしてはいるが、それも休憩室まで保つか危うい。
昔は一日くらい寝ていなくてもどうとでもなったというのに、それこそ徹夜で仕事に励んでいた時期だって数え切れないほどあるというのに、時の流れとはつくづく恐ろしい。



「…ぁ…っ」



ぐらり…、視界が揺れて身体のバランスが崩れる。
倒れるのを覚悟して目をグッと瞑ったとき、ものすごい勢いで向こうから駆けてくる足音が聞こえた。



「っ、はぁ…、間に合った…」
「…っ？」



力強く抱き留められ、焦ったような息遣いが頭上から聞こえる。
顔を見上げる気力は残っていなかったけれど、ふわりと香る匂いはもう切り離せない日常の一部となっていて、目の前にいる相手が誰か分かった途端酷く安心している自分がいた。



「大丈夫か…？」
「……ん」
「はぁ…、全然そんな風に見えないけどな」



反射的に返事をするも一瞬で見抜かれてしまう。
さすがに、ずっと一緒にいるだけのことはある。
ため息を吐きながらも、ぎこちなく背中を摩る手に…心配してくれる気遣う声に…、今だけは気を抜いていいのだと思えた。



「ちょ…、北山っ！？」



焦って名前を呼ぶ声を聞きながら、支えてくれている腕の温もりに静かに身を委ねることにした。

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