Tresure box 〜藤北〜

寒がりな君 ページ1

リアル。甘々。恋人設定。



sideF




寒い日の北山は、まるで猫みたいだ。



「あー…」



もこもこの着る毛布をすっぽりと被ってソファーの上、身体を丸めて少しでも熱を逃すまいとじっとしている。

時折ぶるっと身体を震わせて縮こまる様子はかわいいというよりかわいそうの気持ちがまさって、早く暖かい春が訪れないものかと思いながらせっせとダージリンティーを淹れた。
とはいえまだ冬は始まったばかり…、これからもっと寒くなる季節をこの寒がりな恋人は乗り越えられるのだろうかと毎年のように危惧してしまう。



「はい」
「んー…」



仕事をしているときのスイッチを完全に切っている北山は、この時期はいつもこんな調子だ。

普段アクティブにどこにでも出かけていくのに、まっすぐ家に帰り丸くなって寒さと格闘している。
たまには外にご飯食べに行こうと誘ってみても、温泉に行こうと言ってみても、力なく首を横に振って家にいたいと小さく呟く。

そんな北山だけど、やっぱり業界の人に誘われたら無下に断れないらしく、今夜は飲みの付き合いに参加してきた帰りということもありいつもよりさらに寒い寒いと訴えてくる。
本当に気を許している相手には我慢せずに誘いを断れるから大丈夫だろうけど、今日みたいな日は心配。



でも今日みたいな日、北山が帰る場所に選ぶのはいつも俺の家。

だから俺はいつもより暖房を強めに設定して、北山専用にと買った着る毛布を準備して寒さに凍える北山を迎え入れるための準備を怠らないのだ。



「はい、これ飲んであったまって」
「ん…」



極端に口数が少なくなるとちょっと危険。
だいたいそんな日の翌朝は調子を崩してしまうことが多いから、今のうちに早く身体を暖めなければ。

気怠そうに起き上がり猫舌で少しずつフーフー冷ましながら飲む北山を後ろから包み込むように抱き締めて身体を摩っていると、ふ…と笑う気配を感じた。

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