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「……ハーっ、あーもーっ!」
「っ…?」



盛大にため息をついて、北山はぎゅうっと俺を抱きしめた。
息ができなくなるほどぎゅうって抱きしめて、それから力を緩めてトントンと落ち着かせるように背中を撫でて…、また優しい声が降ってきた。



「意地悪言ってごめん。
大丈夫だから、もう怒らないから…それ止めろ」



噛み締めている唇にそっと指で触れて、泣いていいから…我慢しなくていいからと優しく笑ってくれて、俺は涙の止め方が分からなくなって、ひっく…としゃくりあげながらみっともなく泣いてしまった。



「まーったく、お前俺のこと好き過ぎ。
なんか年々愛情深めになってね?」
「う…」
「んはっ。…まぁ、嬉しいけどね」



男前が台無しだななんて言いながら、泣き止まない俺を慈愛に満ちた目で見つめてくれている。



「……きたやま」
「お、泣き止んだ?」
「ん…」
「よかったよかった。あ、水飲む?」



泣きすぎて疲れたろーと慣れた手つきでペットボトルの水を差しだしてくれる。



そう…慣れているのだ、北山は。
北山のソロの仕事の時、俺は大抵こうなってしまうから。

グループの時とはまた違う一面を見せてくれる北山が、すごくかっこよくて、大人で、…少しだけ遠い存在になってしまったような気がして。



舞台に駆け寄るなんて奇行に走ってしまったのは初めてだったけれど、いつも個人の仕事を終えた北山にぎゅっと抱きついて甘えてしまうのは昔からの恒例行事みたいなものになっている。
北山は毎度慣れた手つきでヨシヨシと宥めてくれる。

泣きすぎて身体中の水分が流れ出してしまったような感覚に、クラリと目眩がした。



「おっと…、大丈夫か?」



ガンガンと痛む頭を抑えながらゆっくりと水を飲んでいくと、少し症状が治まった。
鼻をすん…と慣らして泣きはらした目で北山を見ると、ん?と優しく首を傾げる。



「…舞台、すごく良かった…デス」
「へ?あははっ、どうもありがとうございます」
「めちゃくちゃかっこよかった…」
「へへ…、そぉ?」



あ…今のはかわいいかも。



「……」
「…あー、ちょい見過ぎじゃね?」
「っ…」
「んはは」



北山はおかしそうに笑う。
そしてポンと頭に手を置いて、またいつものアレがやってくる。



「ありがとな、藤ヶ谷」



わしゃわしゃと無造作に髪を撫でるコレは、ジュニア時代から少しも変わっていない。
俺はいつまで経っても、北山のかわいいかわいい弟のままなんだ。

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設定タグ:北藤 , キスマイ , 短編集   
作品ジャンル:タレント
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ひろ(プロフ) - 絢音さまご返信ありがとうございました^_^ 今は過去の別サイトは紹介されてないのですね。それでは新作がアップされる機会を楽しみにしておりますね(o^^o) またご迷惑でなければコメントもさせてください。お忙しいところ、ご連絡くださりありがとうございましたm(_ _)m (2021年5月12日 21時) (レス) id: 88642e1cbe (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ひろさん» ひろさん、初めまして(^^)いつも作品読んで下さりありがとうございます♪1ページごとにお星様〜、そんな事言ってくれるの初めてです!とっても嬉しいです(^^)実は歴長いですが、過去の作品は別サイトにあり今はご案内していないんです。お気持ちだけ頂戴しますね(^^) (2021年5月12日 21時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 1ページごとにお星様を押すことができたら良いのに。そしたらぜんぶのページでお星さま押します。たびたびのコメント、失礼しました^_^ (2021年4月26日 15時) (レス) id: e1b1489f48 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ - はじめまして。作品いつも楽しみにしています^_^絢音さんの作品の登場人物がみんな優しくて魅力的で、温かい気持ちになるので、とても好きです。他にも作品をお書きになられていらっしゃいますか?可能であれば拝見したいですm(_ _)m (2021年4月26日 14時) (レス) id: e1b1489f48 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» ふふふ、ほんとは怖いままで終わらせようとしてました(小声)たまには思い切りなバッドエンドも書きたいと思いつつ、誰得なんだ?と控えてますw。でも最後の描写少なかったかなー、もう1ページ頑張ってもよかったかなぁーなんて沸々思ってきてます(*゚▽゚*) (2021年4月2日 22時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絢音 | 作成日時:2019年11月3日 23時

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