ここから始まる…かもしれない二人

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「藤ヶ谷っ？」
「っ…ごめ…」



そのままずるずるとしゃがみこむ藤ヶ谷を追いかけるように一緒にしゃがんで顔を持ち上げる。
真っ赤になっているのにちっとも汗を掻いていない様子と、頭痛が酷いのかぎゅっと目を瞑って耐えるような様子にある病名が思い当たる。



「藤ヶ谷…熱中症起こしてるかも…」



しんどそうな呼吸を繰り返す藤ヶ谷にスタッフさんを仰ぎ見ると、すぐバスで処置しましょうと運ぶのを手伝ってくれた。
バスを冷房で最大にしてくれて、帰る準備をするからと俺だけ残された。

後部座席に寝かせて耳元で藤ヶ谷の名前を呼ぶと反応があったから、とりあえず救急車の世話にはならずに済みそうだ。



「衣装脱がすからな。
あと身体冷やすから、ちょい冷たいの我慢なー」
「っ…」



連日のように熱中症が騒がれているから、外ロケの時は特に熱中症対策グッズをスタッフさんがたくさん用意してくれているおかげで、すぐに身体を冷やしながら水分と塩分を与えることができた。

急速に冷えていく身体にいよいよしんどくなったのか熱い手に氷冷スプレーを持つ手が掴まれる。



「やだ…つめた…」
「もうちょっとだから」
「いや…さむい…」



藤ヶ谷の言い分もわかるけど、早く熱を冷まさないともっと辛い思いをさせてしまうから、うわ言のように嫌だやめてと繰り返す藤ヶ谷を何とか宥めた。



「もう少し飲めるか？」
「ん…」
「ゆっくりでいいからな」



頭を持ち上げて飲みやすい体勢にさせ、噎せないように慎重にペットボトルを傾ける。
塩タブレットを口に含ませながら扇いでいると真っ赤だった藤ヶ谷の顔色が少しずつ戻ってきた。



「……北山」
「ん？大丈夫か？」
「…ごめん」
「……もう謝るなよ。俺、お前に謝ってもらうような事なんて何もないから…」
「え…？」



藤ヶ谷の目が僅かに見開かれる。
俺はその目から逃げるように、キンキンに冷やしたタオルを目の上に被せた。



「うわっ、冷たいってば…」
「我慢しろって」



一悶着の末にやけに大人しくなった藤ヶ谷に大丈夫かと肩を摩り、俺は暫し考えた末…ゆっくりと口を開いた。

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