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わたしのことちゃんと見てくれてるんだ。

気遣いの人だなとは思っていたけど

こんなにいろいろ考えてくれるなんて、

なんか、凄く嬉しい。



「……優しいね。涼太くん」

涼「Aは特別だから」

「え?」

涼「いろいろ無理させちゃってるからさ。これくらいはしないと」

「そっか。ありがとう」


わたしは気づかれないように、

深く息を吐いた。

そうだよね、

衣装係として頑張っている私を

気遣ってくれてるだけだよね。

でも


『Aは特別だから』


なんて、言われたことがないから、

ドキドキするのをやめられなくて困る。


まぁ、いいや。

とにかく嬉しい。

すごく幸せな気分。

それだけで充分。



そのまま自然な流れてふたりで

下駄箱にむかうと、

そこには夏恋と数原さんが立っていた。


龍「やっと来たな」

夏「A、待ってたんだよ」


そういう夏恋の顔が少しこわばっていることに

気がついた。

まさかとは思うけど、

わたしと涼太くんのこと、

へんな風に勘ぐってないよね。

夏恋にへんに誤解されたくない。

わたしは頭をフル回転させた。



「数原さん!」

龍「なに?」

「あの、あの…さっきのミシンのこともう1回よくおしえてもらえませんか?」

龍「ああ、あれね」

「あと、数原さんの代のときの衣装のこと、もう少し聞きたいです。」

「夏恋、わたし、数原さんに聞きたいことあるから、先帰るね!」

涼&夏「え?」

「ごめんね、待ってくれてたのに。でも、聞けるときに聞いとかなきゃって思って……」




わたしは数原さんの腕をひっぱるようにして外に出た。

視界の端に驚いている夏恋と、

なぜだかふてくされた顔をした

涼太くんが見えたけど、

わたしはとにかくその場を離れなきゃ

という一心だった。



そのままずんずん歩き、門を出たあたりで

数原さんが笑い出した。


龍「もう大丈夫。ふたりとも追いかけてこないから」

「あ!ごめんなさい、わたしなんだか失礼なこと……」

龍「いやいや、大丈夫。……ミシンのことは口実だよね」

「……はい。すみません」

龍「そっか」

「ちょっと、いろいろあって」

龍「いろいろ……ね」


数原さんは意味ありげににやりと笑った。

大人の数原さんは、

すべてお見通しなのかもしれない。

夏恋と涼太くんがふたりで帰ることになるといい。

きっと夏恋の顔はあきらかにやきもちをやく

そんな顔だった。

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作者名:ゆーか | 作成日時:2017年10月16日 19時

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