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まるで死んでいるようであった。近くにいた場地はイザナの姿を見ると勢いよく立ち上がり「イザナくん!」と叫ぶ。イザナはスタスタと髪の長い奴の目前に黙ってしゃがみ込むとその長髪を掴み上に引っ張り上げたのである。
「何やってんだ三途」
男の顔が顕になる。その白樺のような美しさを持つのは万次郎と場地の幼なじみである三途春千代である。三途はボーと宙を見つめ何やらブツブツとうるさい。完全にイカれてる姿であり、何かあったと一目わかる。
何でも東京卍會の奴らは海に行ったらしく、その時三途が溺れちまったと。その後から様子がおかしいのだと万次郎は言う。
フーンと興味がなさそうに呟いたイザナは「斑目」とチョイチョイと突っ立ていた斑目を呼んだ。
「え?」と突然呼ばれて驚く斑目だが体は咄嗟に動き出し、イザナの元へと動いていた。イザナと三途の目の前に行くと「ちょっとコイツ引っ張たけ」とイザナは三途を指さして言った。裁判官のようなハッキリとした口調である。
斑目は子犬なのでよく分かんなかったけどゴン!と三途の頬を殴った。手加減のない拳であった。三途は衝撃でそのままソファーに倒れる。しかしグデと動く様子がないので少しやっちゃったかもと焦ってきた斑目はチラチラとイザナの顔を見る。
イザナは面倒くさそうに唇を尖らせ始めた。
「どこの海」
「?えーと、松原ってとこ」
場地が右を見ながら答えるとイザナはウワァと本当にめんどくさそうに顔を歪める。この顔は灰谷兄弟がお互いを馬鹿みたいに褒め合うという俺ら最強タイムの時によく見る顔だ。つまりガチでダルい時。
「あそこ出んだよ。たちの悪ぃのが。多分それに引っかかったんだろこのアホは」
バシとイザナは三途の頭を叩く。しかし三途はピクリともしないので尚更怖かった。ヤバいんだなと本気で思ったのだ。
「三途大丈夫なの」
恐る恐る万次郎は言う。その目はどこか不安そうである。そんな万次郎をチラと横目で見たイザナはハァとため息を零す。
「部屋に籠るぞ」
「え」
「食いもんとか飲み物とかかき集めてこい」
イザナはスクと立ち上がり三途を抱き抱えた。そしてスタスタと2階へと向かうのだ。万次郎は「助かるの!」と目を大きくさせて叫んだ。イザナは「多分」といつも通りに答えた。そんな様子を見つめた斑目と場地は少し互いに見つめ合うとタタ!と二人の後を追うように駆け出したのであった。
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月野 - この手の話、今まで無かったので新鮮でした!とても面白かったです!!更新楽しみにしています! (2022年10月6日 2時) (レス) @page19 id: dccd327fc0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 軍時さん» まじですか?ありがとうございます!! (2022年9月25日 22時) (レス) id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 武道可愛いですねw。空になったペットボトルまだ持ってるなんて…。竜胆は武道になにをあげるんだろう。気になります!斑目の設定考えた主さんが天才すぎる!! (2022年9月25日 22時) (レス) @page19 id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 特殊な訓練を受けている彼らだからこそ出来る対処法なので実際には…です笑なのでたけみっちがペットボトルをブンブン!と降っても除霊は出来ないことになりますね、かわいいですね🌼楽しいと思って貰えてとても嬉しいです🥰コメントありがとうございました! (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 大丈夫ですよ〜!ゆっくりにはなりますが更新頑張りますね💪 (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月13日 11時