続き ページ6
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「こういうことも、あんな場所じゃできねーだろ」
「綺麗な部屋が必須です」
そう言うと、今度は私から萱島さんに、キスをする。
だんだんと激しさを増していくそれは、これからの展開を想像させた。
顔が離れて、見つめ合う。
口では言わずとも、私に委ねられているのを感じる。
「したい。もっとして?」
「ずるい言い方」
激しいキスと、反対にすごく優しく身体に触れる手の感触に、ただ快感に支配されて、余計な考えは頭から排除されていく。
これは現実逃避なのかもしれない。
でもそれでいいの。
例え、正しくなかったとしても、それしかもう生きていける道はないから。
「はぁ、かや、しまさ、、、」
「っ、あー、やばい」
二人の荒い息遣いだけが聞こえて、もう世界に二人だけでいいと本気で思えたんだ。
「平気?」
「大丈夫です、萱島さん優しいから」
「これでも大人なんで」
ほい、とペットボトルの水を渡される。
ぶっきらぼうに見えるけど、こういう気遣いできるんだよな。
「ありがとうございます」
「この世界も、欠点ばかりじゃないって思えちゃうのは、単純すぎるよな。人間の本能かなんかしらんけど、高校生のガキみたいで笑える」
「ガキでも、バカでも、安くて軽い女でも、何でもいい。ていうかむしろそんな人間の方が、この世界に即してると思いますけど」
「ははっ確かに、ぴったりだわ」
こんな虚しい関係を保つことでしか、生きていけないなんて、もう呆れを通り越して笑える。
でもこれが、今の全てなんだ。
私なんだ。
「でも何とも思わないなら、抱いたりしない。Aはいい女だと思うけど、客観的にみても」
「褒めても何も出ませんよ」
「本当だから」
真面目な顔で、見つめられると、何も言えなくなる。
ずっとそうだった。
彼の目線は、痛いくらいに怖い。
「これからも精進いたします」
「ふっ頑張れ」
照れておかしなことを口走ると、笑って頭に手を置いた。
そしてベッドから出ていく。
あーもう、心臓がうるさい。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年9月21日 0時