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私たちの車両の人間だけになり、互いの怪我を労っていると、畑野先生が申し訳なさそうに頭を下げた。
「あの、心配かけましたよね、すいません！」
「無事で良かった」
「生きて会えて、嬉しいです」
私は泣くことを我慢するのを諦めて、畑野先生に駆け寄る。
畑野先生も涙ぐみながら、優しい笑顔で受け止めてくれた。
「よし！じゃあ手分けをして、復旧作業を行いましょう！」
壊れてしまった手作り風呂が散乱し、車両周りはひどい有様で、片付けに追われた。
落ちていた紙を拾う。
この紙が舞った時から、私たちは変われたんだ。
「良い絵だったのに、こんなになっちゃったんだ」
「結果オーライや、みんなが無事なら」
「ありがとう米澤くん。君が全員を助けたんだよ」
いつもの眩しい笑顔が輝いていて、ひとまわり大きくなった米澤くんは、とっても頼もしかった。
片付けていると、萱島さんがじっと石の上に座っているのが目に入る。
山本さんの言葉が響いているのか。
あんな煽るような内容に惑わされてほしくない。
「萱島さん」
私の呼びかけに顔を上げると、どこか悲しげな表情で、私も切なくなる。
「約束、守ったな」
いつか萱島さんを助けると、前に約束したこと覚えてくれてたんだ。
「助けられましたか？」
「でもその前に俺が助けたから、まだ貸し1だろ」
「え」
「冗談だよ」
下手くそな笑い方。
作り笑顔で心を隠す彼を、私じゃ助けられないのかな。
「弱くてもいい。私はそう思うことにしました。いっぱいある傷はまだ癒えそうにないから、弱いままで踏ん張るしかない。そう思って私は、私を守ろうと思います」
「俺は自分をわかってるから、そんな心配すんな」
見透かされているのか、優しく笑うと、立ち上がりそっと頭に手を置いて、そのまま行ってしまった。
やっぱり、萱島さんは私よりずっと大人だ。
自分の事も人の事もよく見ている。
全てを受け入れて、飲み込んで、そして立ち上がっているんだ、何度も何度も。
やっと過去と向き合えた私は、一人歩きができたばかりで、あんな風に生きたいと思った。
いつになったら、肩を並べられるんだろうな。
彼の背中を見て、そんな寂しさを覚えた。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
