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萱島さんを起こしながら顔を上げた時、辺りの景色はまるで地獄のようで。

殴り、殴られて、人間同士痛めつけあっている。

信じられない。
理性的で、ルールを守り、他人との距離感も大事にする。
それが私たちの社会だったのに、

こんなの、ひどすぎる。

流れてくる涙は止めようがなく、なにもかも壊れてしまいそうな気がして、怖くてたまらなかった。



え、紙?

目の前に落ちてきた紙の出どころを見ると、車両の上に立っている米澤くんの姿があった。

肩を振るわせて、泣いていた。


「なぁここ未来やろが!未来がこんなんでええん?!こんな何にもないところで人がこんなんでええん?!もう戦うん止めよう!」


米澤くんの叫びは、争っていた人達の手を止めた。

こんな未来望んでいる人なんていない。
不可抗力でこんな場所に来て、みんなスレスレの状態で精一杯生きている。
それなのに、争って、憎んで、こんな場所にしたいわけがない。

米澤くんの悲痛な訴えは、全員の心に響いて、もう拳を振おうとする人はいなかった。


静まった空気の中、向こうの車両の男三人が電車に走り込んで鞄を取り、そのまま去っていった。

それが、目的だったの。
そんなことで、こんなに、、
なんか虚しくて、力が抜けそうになる。

男の走り去った方向に、畑野先生の姿が見えた。


「畑野先生!よかった、生きてた、、」


ほぼ同時に山本さんも姿を表す。

ついにリーダーの登場。
戦うことをやめた私たちに、彼は何を言うんだろう。


二人に注目が集まる中、畑野先生が何かを覚悟したような表情でゆっくり口を開いた。


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作者名: | 作成日時:2023年8月20日 22時

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