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そして自然と萱島さんと二人になり、ゆっくりと帰路についていた。
何だか萱島さん、病院とは打って変わって難しい顔してるな。
「赤ちゃん、可愛かったですね。あんなに小さい赤ちゃん初めて見たから、ちょっとびっくりしちゃった」
「あぁ、そうだな」
心ここに在らずな相槌。
絶対に変だ。
「萱島さん?なにか、ありました?」
難しい顔のまま、萱島さんは語り出した。
その内容は、来月ロケットの発射が決まったことと、寺崎さんが、防災インフラの整っているスイスに知り合いがいて、希望すればそこに避難できるというもの。
そして白浜さんの、ここに残るという意思を聞かされた。
「とうとう、分かれ道がやってくるんですね。さすが寺崎さん、スイスか、、、」
「白浜、あいつなんで、、いつまでヒーローやってんだよ」
なんだか白浜さんらしい、と思ってしまっている私がいる。
きっと彼は最後まで、誰かの為に動きたいんだ。
萱島さんは、と口にしようとしたけど、声に出さなかった。
私が今、それを聞くべきじゃない。
私は私、萱島さんは萱島さんなんだから。
でも、私は何を選ぶ?
それから、一時は忘れ去られていたワイドショーでも特集が組まれるようになり、テレビでも私たちの唱えている隕石墜落までの、カウントダウンが始まった。
またネットを賑わしていて、あちこちで論争が巻き起こっている。
消えた乗客は詐欺師か、救世主かと。
《後悔せんよう、みんな考えて欲しい。今何が出来るのか、その時までどうするのか》
米澤くんの最後の動画は、そう締めくくられていた。
何だか、考えさせられるいい言葉だ。
私の後悔しない選択は、、、
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時