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萱島さんの元を離れて数日経った頃、待ちに待った知らせを受けて病院へ駆けつけた。
静かに扉を開けると、そこには生まれたばかりの新生児と、江口くん小春ちゃんカップルの姿が。
「か、かわいい、、、」
「Aさん、無事産まれました」
「ほんっとにおめでとう二人とも!赤ちゃんも誕生日おめでとう」
なんだか急に親らしくなった二人の姿と、三人の明るい未来に、喉の奥が熱くなってくる。
先に到着していた畑野先生と立花さんはすでに号泣していた。
そしてドアの開ける音に振り向くと、慌てた様子の萱島さんが現れた。
「えっ、ちょっと泣いてたから、、おめでとう!」
江口くんを抱きしめて、新しい命の誕生を喜び合っている。
こんなに和やかで、嬉しい日もちゃんとあったんだ。
私たちの未来には、、、
「みんなが繋いでくれた。この子の命」
「白浜さん。あの時帰ろうって言ってくれてありがとう」
「いや、俺は何も」
「そう思ってるのは、俺らだけじゃないよ」
病院の外に出ると、未来でサバイバルを一緒に乗り越えた面々が揃っていた。
久しぶりの再会に自然とみんな笑顔に包まれる。
玲奈さんの隣には明石さんがいて、玲奈さんが作ったオムツケーキを持ってお似合いの様子だった。
二人うまくいったんだ。すごい嬉しい。
そして続々とみんな白浜さんにお礼を告げる。
あの過酷な状況で、みんなを引っ張って、命を助けた功労者は間違いなく白浜さんだと、全員が認めているから。
白浜さんは素直に受けとめられないのか、伏目がちに視線を逸らした。
立て続けに、萱島さんにもみんなから感謝の気持ちを伝えられた。
厳しかったけど、私たちに現実を突きつけて、ハッパをかけてくれていたのは、いつだって萱島さんだった。
「なんか、懐かしいな」
萱島さんが、嬉しそうに呟く。
懐かしんで、再会を喜べるくらい、あの未来を心に留めといてくれているなら、私はそれが嬉しい。
萱島さんにとって、この出会いも、あそこで起きた全ての出来事も、意味のあるものだったなら、それだけでいいんだ。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時