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「政府は隕石の軌道を変化させるために、FG1ロケットを発射させる準備を進めているらしいわ。調べた結果によると、隕石の飛来予定は12月9日。あの手帳に書いてあったことが現実になりつつある」


電話口の寺崎さんの声が聞こえた。
動いていたんだ。
しかも日本の中枢にまで、声をあげて。

世間では、信じていない人の声も多い。
でも政府はちゃんと動いて、この国を、国民の命を守ろうとしている。


「でも今はもう、その計画に賭けるしかないって。だからこれ以上、国民の不安を煽るようなことはしないでほしい。もしパニックになったら、とんでもない二次被害が起きるって」

「あの私達、これからどうすれば」

「祈るのよ」


そして通話が切れる。



 “祈る“

ロケットを発射させる計画はもう動いている。
もう後は政府を、この国を信じて、祈る事しかできない。
私たちの、運命をかけた賽は投げられた。


何も出来ない事を嘆くみんなに対して、萱島さんが口を開いた。


「最後の日まで、どう生きるのか」


確かに、残された時間は少ない。
もう後悔の無いように生きるしか、道は無い。



加藤さん宅からの帰り道、萱島さんと二人道を歩いている。


「白浜さん、何してるのかな」

「あー闇落ちヒーローね。仕事してんのかね」


天職だった消防士の仕事、ちゃんと続けられているんだろうか。
世間の不躾な声に、追いやられていたりしないかな。


「大丈夫だろ。あいつは真っ直ぐ生きてきた。きっと周りに、引き上げようとする、あいつに似たお人好しがいるだろうから」


迷いなくそう言い切る萱島さん。
信頼しているんだと微笑ましくなる反面、なんだか少しジェラシーを感じてしまった。
男の人相手に何考えてんだろ、私。


「それに、嫌でも時間は流れてく。勝手に立ち上がって、またヒーローらしい綺麗ごと、語り出すんじゃねぇの」

「白浜さんは、強いですもんね」

「Aも強くなっただろ。もうあの頃の死んだ目、全然してないし」


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作者名: | 作成日時:2023年8月20日 22時

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