ペンディングトレイン

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「もういい大人なのに生徒に無視されて、学校に行くのが憂鬱で、でももう過ぎたことです。今を大事にしましょう。過去を変えることはできないけれど、今ここで、火をつけることはできる。未来を信じましょう」


それは傷を負った心に絆創膏を貼られたような、いつも強く優しい彼女だから言える、そんな言葉だった。


「それに白浜さん、一人で頑張るんじゃないです。みんなでやりましょう。私も火おこし練習します。みんな過去は色々あるけれど、前に進むしかないから、火つけましょう」


一人にさせたくない、そんな思いから出た言葉だったけど、白浜さんに届いたかな、

火をおこそうと前のめりになると、萱島さんもその輪に加わる。


「これ、俺はやらないよ。手が傷だらけになったら、髪切れないからな。お前が出来るようになって、俺は他のことをやって、そうやって協力し合う。一人で背負うな、俺らでやってくんだよ」


萱島さんは白浜さんを真っ直ぐ見据えそう言った。
その言葉は、一人で頑張り続けた彼を、労い支える、そんな萱島さんの意思が見えたようだった。

そして、火がついた。


「ついた！やった！」


全員で喜びをかみしめ、笑い合う。

この何もない森にも勝てるかもしれない。
そんな気さえしてきて。


その喜びのなか視界の端に何かを感じ、振り向くと


「子供？」

「もう来ていいよ」


突然の登場に驚きつつ、みんなで後を追いかける。

そうして開けた場所に出ると、息を飲む光景があった。

木や枝で作られた門構えや柵。
ある種の城のようだった。


「中入るなよ、あの男いんだろ」


そのままみんなと奥へ進もうとした私の肩を掴み、待ってろと言う萱島さん
心配してくれるのは嬉しい、けど


「大丈夫です。私も話したいから」

「はぁ、なら後ろにいなよ」


大袈裟にため息をつくと、目配せして自分の後ろに下がらせた。
その頼もしい姿に、密かに胸は高鳴ったけど、気づかないフリをした。

奥から何人かの男が出てきた。
真ん中の張りついたような笑顔の男が口を開く。


「初めまして、5号車の皆さん」


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