【夜久衛輔の嘆願】 ページ27
・
・
あとから聞いた、AAという女子は、
どうやら黒尾と付き合っているわけではないらしかった。
というのも、「Aさん、きれいだよなー」と黒尾にカマにもなっていないカマを掛けてみると、「え、やっくん何言ってんの？Aは綺麗ってより可愛い方じゃない？」とまじまじと返されたから。現在進行形で付き合ってたら黒尾はもっとデレて気持ち悪いだろうから、多分ない。
「Aさんってさ、黒尾のことどう思ってんの？」
少しは話せるようになった彼女にそう聞くと、さん付けじゃなくていいよ、と柔らかく言いながら、
「黒尾は1年生のときからずっと、大切な友だちだよ」
あとすごく尊敬してる人。
あ、笑った。目の前で解けた表情に一瞬時が止まったような気持ちになって、いやこの子を笑わせている話題はトサカだ、と思い直す。なんとなく癪な気持ちになりながら、
「……あいつと付き合いたい、とかは思わないの？」
そう聞いた瞬間、マズッたなと思った。表情がパッと変わって困ったような顔になる。他の奴らからも沢山聞かれたのかもしれない。
「…黒尾はそんな風に私のこと見てないからねえ」
みんなに優しいもん。
質問にはイエスともノーともはっきり答えず、曖昧に笑った彼女。恋愛的に好きって否定はしてないんだよな、と心の中で思いながら、「そっか」と返した。と、Aの背後から影が出てきて、
「あーやっくんがAにちょっかいかけてるー」
表情は普段通りに取り繕っていても「黒尾」と呼ぶ声が嬉しそうに上がっていて、やっぱそういうことなんじゃねえのかな。
「A、あとでさっきの授業のとこ教えて」
「いいよ、今日難しかったもんね」
勉強も得意な彼女が黒尾に教えんのが、1年の時からの習慣らしい。2人にしか伝わらない空気みたいなのを感じて、若干口を尖らせていると、
「夜久くんも、さっきのとこわかった？」
突然話を振られて、彼女なりの配慮だと気づく。正直に横に首を振れば、「じゃあみんなで勉強しよう」と笑うAに、横に立つ黒尾がやっぱこういうとこ好きだわ、と言いたげな顔をだらしなく向けていたので、思いっきり腕を叩く。
「いっっった！え、夜久くんこわ！！」
なーんでこんな駄々漏れなのに、
お互い気づかねえのかなあ。ついでに俺は何してんだ。
なんて思いながら、笑ってるAと痛がる黒尾を
早くくっつけ、と見上げた。
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 689人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒尾ファン - わああああああああかっこよすぎます!！もう大好きです。惚れましたこのような作品を作ってくださりありがとうございました感謝しかありませんこれからもがんばってください (3月26日 21時) (
レス) @page26 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
氷咲＠氷珀(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ずっと気になっていた作品でやっと読破したのですが、めちゃくちゃ癖に刺さりました！言葉のセンスとか、文体とか、会話の間から本人たちの温度の表現まで、コメ欄250文字では表せないくらい最高でした！完結おめでとうございます✿ (3月8日 12時) (レス) @page25 id: b0b4af51b9 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 完結おめでとうございます！毎話ずっと少女漫画を読んでるようなトキメキをくださる作品で、本当に大好きです…（泣）アナザー楽しみにしております、一先ずはお疲れ様でした…！！ (3月7日 21時) (レス) @page25 id: a2759a36ff (このIDを非表示/違反報告)
坂崎(プロフ) - 執筆お疲れ様でした…！普段めったにコメントすることはないのですが、お話の運び方や表現の仕方がとっっっっても胸に刺さってもっと黒尾さんが好きになりました（；＿；）本当にこの作品に出会えて良かったです…！次回作も楽しみにしております！🖤 (3月7日 18時) (レス) @page25 id: db3faabed6 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 完結おめでとうございます！毎話ドキドキしながら読んでいました💕 かっこいい黒尾さんをありがとうございます！アナザーストーリーも楽しみにしています✨ (3月7日 10時) (レス) @page25 id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パルム | 作成日時：2024年2月16日 22時
