続き ページ2
――。激しく息を切らす音が聞こえる。
それが自分のものなのか、はたまた誰かのものなのかまでは頭が回らなかった。
ただ必死だった。何かから必死で、逃げていた。
走って、走って走って走って。次第に悲鳴を上げ始める体に鞭を打ち、走り続けた。
どれくらい走り続けただろう。呆然と、霞む意識下で考える。ただ、ついに限界が来たということは明確だった。どこかの建物の裏。ザリ、と音がした。それが地を蹴る音だと分かるまで数秒。体はもう動かない。近づいてくる人影。
それを最後に、俺の意識は途切れた。
▼△▼△
—―舞台は、ある王国である。
そこには古びた、しかし優美な雰囲気を持つ探偵社があった。
写真を撮るなり、少し足を踏み入れるなりする価値はある建造物だと思う。だがしかし、道行く人は誰一人として止まることは無かった。過去、確かに輝いていたそこは、今では寂しく、町の端に存在していた。
閑話休題。
探偵社内の客間で一人、真昼間から幸せそうに寿司を頬張る男の姿。まさか、誰もこの男がその探偵本人だとは思うまい。
「…ッうんま〜〜昼からの寿司もサイコーだなぁやっぱ」
パァッと効果音が付きそうな見事な満面の笑みである。先までに散々食べたというのに、何が惜しいのかまだ味を噛みしめる男。
しかし、なにやら後方がうるさいなと思考をそちらに移した途端、
バサバサドサッ！ゴチン！
本の落下音と、ついでに本が何かに当たる音がハッキリ聞こえた。大体予想ができてしまって、うわぁ痛そ、と顔を引きつらせる。
案の定書庫を覗くと、散乱する本と、頭を摩り半泣きの助手の姿があった。
「イッッタ…！！もう！ないちゃんが変な本の並べ方するから！！珍しく僕が！自主的に！綺麗に並べてあげようと思ったのに！！なんで本の雨がッ！」
「人のせいにしないでもらえますー？？てか自分の不器用さいい加減自覚しなよ…。ちゃんと片付けてねほとけっち」
「じゃあアレコレ雑用頼むのやめて！！！！」
負けじと言い返す助手(雑用)と飄々とした態度の探偵の言い争いである。毎回負けるのは助手のほうであるのだが。
「キィーッ！もういい！！じゃあ依頼は来た？最近ゼロ続きでしょ…！よくて犬の散歩だよ！？捜索ですらない！でも今日は来る気がしなくもなくなくもないような」
「…来てないし、そもそもそんなお前の勘で都合よく依頼が来るわけ…」
その瞬間、来客を知らせるベルがチリンと鳴った。
「あ、ないこさーん！依頼持ってきたでー！」
「」
元気な関西弁警察官の登場である。
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オレンジミックスの香り - なふさん» ありがとうございます！！！！！更新頑張んなきゃ…（遠い目） (2023年4月11日 14時) (
レス) id: b257397a37 (このIDを非表示/違反報告)
なふ - やぁもう好きです！！！！！ 無理せず、更新頑張ってくださいっ (2023年4月5日 15時) (レス) @page4 id: 2326558a84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オレンジミックスの香り | 作成日時：2022年7月25日 14時
