命令10 ページ37
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東峰の足が震える。立っていられるのもやっとな程、ガクガクと。
一歩、また一歩と死に近付いているこの足は、現実では全く動いてくれない。両手で震えを止めようとしても、伝播したように腕も震え出すのだ。
あぁ、来る。こんなに怖いとは思っていなかった。何とかなる、そんな楽観的な考えしか持っていなかった。その結果がこのザマだ。もう駄目だ。向こうは全員、生きるつもりだ。攻撃にも守備にも躊躇が無い。あの日向と西谷でさえ、仲間に対して牙を向いている。
東峰「…、だ…い……」
澤村「……」
分かっている。自分はいつも澤村に意思も判断も委ねていた。それが彼の重荷になっている事も知っていて、それでも尚、自分ではどうしようもないからと背中を預けていた。
サーブは国見によってレシーブされ、影山の手にボールが収まった。
影山「東峰さん」
東峰「っ!」
影山は赤葦を真似た。迷いに悩む人間には、トスを上げてやればいい。彼は必ず跳ぶ。それが、体に染み付いた性というものだと、赤葦は知っていた。影山はそれを見ていた。セッターとして、スパイカーに強要しなければならない。それしか方法が無いのだから。
──────跳ばなければ。
東峰には尚更効いた。一度自分に上げられるトスから逃げた事で、もう二度と逃げるものかと決めた東峰には。反射的に筋肉が助走準備に入る。
走る。そして、床を蹴った。腕を伸ばす。ボールに手が届く。
来い。止めてやる。取ってやる。そんな眼差ししか感じなかった。
東峰「……!」
ボールは、東峰の曲がった腕の上を通り過ぎてコートの外に出て行った。
影山「……は?」
及川「な……に、やってんの……」
東峰は膝から崩れ落ちて、床に這いつくばった。ブルブルと震える体を必死に抑え込もうとしながら、短く声を漏らした。
澤村「っ……旭!」
東峰「!……っ、ごめん……でも、っ出来ない……!大地……俺は、殺し合いなんか出来ないっ……」
無理だ。怖い。頭にあるのはそればかり。
澤村はそれ以上言及出来なかった。その恐怖を自分も味わってきたから。その苦しみが自分にもあるから。それを克服するのがどれだけ大変か、知っていたからこそ、東峰に対して戦えとは言えなかったのだ。
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すみた先生(プロフ) - 生きてる人さん» 読んでいただきありがとうございます!自分でもなんで川西をここまで育てたのかよく分かりませんが、役がハマったようで良かったです(笑)。どうかそのまま生きてください…… (7月24日 23時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
生きてる人(プロフ) - 読んでいるうちに片鱗は見えてたのですが命令9の川西が本当に大好きすぎました!!!!!!このような素晴らしい川西をありがとうございます!!あなた様のおかげで命が救われ気力体力全回復しましたありがとうございます!!!!!!! (7月24日 8時) (レス) @page3 id: 17d3aa535f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 命令9の最後にて、チーム分けに間違いがありました。国見と金田一が逆になっていた事をご指摘頂きましたのでここで報告させて頂きます。混乱された方、大変申し訳ございませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。 (2022年1月3日 19時) (レス) @page48 id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 員脚さん» ありがとうございますっ!どんどん加速してラストスパートかけていくんでよろしくお願いしまーす!! (2022年1月2日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
員脚 - あらあら!!!川西くんが活躍しちゃうわ!!!まさかBチームが勝つとは!!やっぱ“すみた先生”最高っスワ (2022年1月2日 22時) (レス) @page48 id: a61a8e014c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年8月9日 12時