命令9 ページ19
13:00
宮治「お前かてこんな事したくなかったやろうになぁ……ツム。クソみたいな弟でほんま悪かったわ……」
色を無くした目に映るのは、灰色の片割れ。もう動かなくなったそれの傍に座って、治は見開かれた侑の瞼をそっと下ろした。
宮治「お前がクソみたいな奴で良かった。一緒にやってくれておおきにな、侑」
双子は共犯者。決して比喩ではなく、単純に二人は共に穢れたという意味。
宮治「あかんって……なんで言わんかったんやろなぁ……俺もお前も。言うてたら……なんか変わってたんか?」
悪いと知りながら続けた結果がこれだ。侑はもうひとつの人格を作り出し、あたかも自分は何も知らない、ただ巻き込まれただけの人間であるように振舞った。次第にそれが本当の自分でたるかのように、錯覚した。
宮治「……いや、どっちもお前やったんやろな。始めん時は、俺とお前よう似とったからなぁ…」
真上から少し外れた太陽が治の頭上の木々の間から光を届ける。
宮治「ほんま……揃ってポンコツや俺らは。
……おもろい事が好きやったんや。アホみたいに突っ走って、ヤバいって気付いた時にはもう遅かったんよな。
こんな所で、お前を殺してまうとは……思てなかったんや」
遅すぎる懺悔を零す。愚かすぎた自分と片割れを、中途半端だった自分を、治は哀しく呪った。
宮治「……ほうか。鬼も元々は人間やもんな」
侑を見下ろすと、治の脳裏に過ぎるのはこれまでの17年間。産まれる前から一緒だった片割れとの時。大半は喧嘩だった。冷蔵庫のプリンを食べただとか、貸した10円を返していないだとか、そんなくだらない事で、よくもまぁ飽きずに10数年間取っ組み合えたものだ。顔が腫れ上がっても、傷だらけだろうと、お互いに好きなバレーだけは一度も休んだ事が無かった。
俺の事一番よう分かっとんのは侑で、侑の事一番よう分かっとんのは俺。
憎たらしく、面倒で、とても居心地の良い関係。
色々な事を思い返して、出てきた言葉は。
宮治「腹減ったなぁ、ツム」
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すみた先生(プロフ) - 生きてる人さん» 読んでいただきありがとうございます!自分でもなんで川西をここまで育てたのかよく分かりませんが、役がハマったようで良かったです(笑)。どうかそのまま生きてください…… (7月24日 23時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
生きてる人(プロフ) - 読んでいるうちに片鱗は見えてたのですが命令9の川西が本当に大好きすぎました!!!!!!このような素晴らしい川西をありがとうございます!!あなた様のおかげで命が救われ気力体力全回復しましたありがとうございます!!!!!!! (7月24日 8時) (レス) @page3 id: 17d3aa535f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 命令9の最後にて、チーム分けに間違いがありました。国見と金田一が逆になっていた事をご指摘頂きましたのでここで報告させて頂きます。混乱された方、大変申し訳ございませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。 (2022年1月3日 19時) (レス) @page48 id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 員脚さん» ありがとうございますっ!どんどん加速してラストスパートかけていくんでよろしくお願いしまーす!! (2022年1月2日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
員脚 - あらあら!!!川西くんが活躍しちゃうわ!!!まさかBチームが勝つとは!!やっぱ“すみた先生”最高っスワ (2022年1月2日 22時) (レス) @page48 id: a61a8e014c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年8月9日 12時