【男主】感触【胡蝶しのぶ】

２章：独占なるもの、 ページ5

ー





薬の研究も勿論しているけれど、それと並行して、料理の腕も上げようと、最近はよく、朝や昼、夜も自分で作るようにしていた。

上手くできたときに、Aさんが「お、これ美味い」なんて言って、本当に美味しそうに食べている姿が嬉しくて。

今夜も頑張ってみようかな……なんて、わくわくしながら料理をする日々。

夕ご飯が出来たと伝えようとしたけれど、いつもなら、寝ているか、鍛錬をしている部屋にAさんが居らず、仕方ないので、外に出た。

そこで見かけたのは、



「へぇ、それで最近はソレ、投げないで自分で動いてんのか」

「はい……自分にこんな気持ちがあるなんて、知りませんでした…………」



夕闇の中で、仲良さげに会話をする、Aさんとカナヲの姿。

Aさんは、カナヲの話を聞きながら、私にしか浮かべるはずのなかった優しい笑みを向けて、聞き入ったように頷いている。

私は思わず木陰に隠れて。



……嫌だ。



そう、思ってしまって。

感じて、私は一体、今、何を……と、我に返るけれど、一度気づいてしまった気持ちを心から退けることは中々に難しい。



Aさんは、私だけのものじゃない。

私以外の女性とも、話したい筈なのに。

締め付けてはいけない筈なのに。

それが例えカナヲでも、胸がキリキリと痛んで。



……苦しかった。

こんな私が嫌だった。





ー

ー→←ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す