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あれから半年以上が経った。今でも、この関係は続いている。
だからきっとこの先もこのまま、いや……それ以上になっているかも、なんて思っていたのに。
「しばらくは、ここに来んといて」
「……は?」
唐突だった。いつものように化学準備室に行くと、珈琲を啜りながら本を読んでいる先生がいて。先生、と声を掛けたら、いきなりそんなことを言われて。
なに、それ。頭がついていかないんだけど。
(……先生、私のクラスに授業持ってないし……私がここに来なかったら、関わりが無くなるじゃん)
唯一、先生と触れ合える場所。二人きりで、居れる場所。
……いやだ。捨てれない、捨てられない。
「なんで?……何で、来ちゃ駄目なの」
先生の着ている白衣の裾を掴む。一向に私と目を合わさない先生。強引に視界に入ろうとすると、先生は一言“やめて”と呟いて。
「……理由、聞きたいん?」
やっと目を合わせた先生に、私はこくりと頷く。
だって、納得できない。こんなこと言われて、はいそうですかって受け入れることが出来るほど大人じゃないから。
「私に、飽きた?別の子、見つけた?ねえ、先生……」
「……まぁ、そんなとこ」
“ほら、もう帰りぃや”強引に部屋の外に押し出され、私と線引きするかのようにピシャリと閉められた扉。
先生の言葉は嫌に重たくて、いつもは優しい声も冷たくて。
(……視界が真っ暗になるって、こういうことか)
何だか、不思議な感覚だ。水の中に沈んでいるような感じ。
夕日が差し込む化学準備室前の廊下で、私の頬に一粒の雫が伝った。
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