第17話ー藤咲あかりー ページ19
「あっつー.......。自販機とかまだ使えるの?」
「どうだろう、お金入れてみよっか?」
言われて、確かに喉は乾いているから財布が入っているリュックに手を伸ばそうとして今は財布が家にあることを思い出す。
「あー....。や、今お金ないからいいや。」
「そう。わかった。」
他愛のない話を璃埜としながら頭の片隅ではずっと目の前にあるものについて考えてる。
やっぱり政府が言ってた極秘の兵器と関係あるのかなとか、
私達の知らないうちに世界の状況はどれくらい悪化したのだろうとか、
この状況は日本だけでのものなのかとか、
他の国ではどうなってるのかとか、
......
.............本当に私達がしている選択が正しいものなのかとか。
いちいち不安になってちゃどうにもならいなことくらい分かってるけど、自分が璃埜や朋美のことを守れなかった時のことを考えるとどうしてもネガティブな方に考えてしまう。
出来ればポジティブになりたいんだけどなぁ..。
「はぁ.....。」
「溜息なんてついてどうしたの?」
「いや、ちょっと不安でさ。でもまぁ、大丈夫だよ。」
「ふーん。無理はしないでね。」
どうにもならないことはあるし、璃埜とそんな暗い話はしたくいなし、今はいいや。
と、そんな考え事をしてたらもう家だ。
見慣れているはずのボロっちい二階建てのアパートは何故か全然違う建物のように見えた。
何故か、は違うか。
理由は明白だ。いつもは閉まりっぱなしの部屋の扉が開いているし、今までの道中では考えないようにしていた「赤い跡」が見慣れた場所ではどうしても目立ってしまう。
そして、初めて見る「モノ」もそこにあった。
左手の薬指にはめている年季の入った銀の指輪にいつも着ていたダサい花柄のシャツの袖、しわくちゃな手のひら。
「柏田さん......。」
初めて見る人の胴体から離れた腕はなんだかマネキンのようだった。
でも荒い断面から出ている血と腐ったような匂いはどこまでも現実だ。
このアパートの管理人をしていた柏田さんにそっと手を合わせてから立ち上がる。
「.....気をつけてね。近くにいるかもしれないから。」
「.....ん。」
ありえないくらい現実味が増してきているこの状況で初めて「悲しい」以外の感情を感じた。
それはただただ純粋な恐怖と怒りだった。
「早く行こ。」
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時