第16話ー藤咲あかりー ページ18
「ごちそうさまでした。皿は私が洗っとくから璃埜は準備してていいよ。」
「ありがとう。」
そう言うと璃埜は立ち上がって自分の部屋の方に引っ込んで行った。
さてと、洗いますか。
璃埜の家に来てから何もかもが璃埜任せになってしまったのに得意な皿洗いさえも任せる訳には行かないしね。それに、皿洗いって洗ってる間何も考えずにすむから楽だし。寝ることの次の次の次くらいに。
皿を洗っている間はシャーと水の流れる音と時々璃埜がタンスを開け閉めする音しか聞こえない。これが意外と心地いい。
皿をサッと水で流してから食洗機に並べる。家じゃあ、お金が無くてちょっと昔の古いのしかないけど璃埜ん家のは最新式でいつ見てもピカピカ。
いいなあ、なんて思っていると準備を終えた璃埜が戻ってきた。
「準備終わったよ。先にあかりの家でいいんだよね?」
「ん。もう行く?」
「うんー.......ネット使えるうちにお母さんにメールだけするかな。あかりも朋美に連絡しときなよ?」
「んー、そーする」
リビングの方に行ってかばんからスマホを取り出してアプリを開く。
朋美には取り敢えず『今からそっち行くよ』って打っとくか.....。
「終わったよー。これも必要になりそうだし、一応持って行った方が良いよね?」
「んー」
深緑の小さめのラジオのアンテナを璃埜が仕舞うのを待たずに私は玄関の方に向かう。
この間買った新品の白いスニーカーを履く。
一回くらいしか履いてないのに既に少し汚れている。
璃埜がローファーを履き始めたから前からもらってあったカードキーでロックを解除する。
中からカチリと音がしてドアが開いた。もしかしたら外は......。
「うわっ.....眩し。」
三週間前の雨が嘘みたいに晴れている。太陽が、とても眩しい。
「本当だ。もうお盆に入る頃だしね。にしても外に出るの久々だから目がチカチカするよ。」
「んー、そーだね。あの化け物も.....居ないみたいだし今のうちに急ご。」
「了解。」
外に出たらもしかしたら全部夢かもしれない、なんてこともチラついたけどそんなことあるはずがない。化け物こそは居なくても所々道路についてる赤い跡や道路のど真ん中に放置されたまんまの車が今の状況を物語っている。
ここからはもう引き返せない。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時