KING【ars M.A】 (ページ19)

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操ページ19

大倉さんの店を出て、呼んで貰ってたタクシーに乗る。

彼はちょっと強引に私を先に乗せ、自分は後から乗り込む。

奥に押し込まれるようになった私に社長はピッタリとくっついて座って、「酔ったねー」なんて言ってる。

「酔いましたか？」
「フフッ、酔ってると何でも許されるよね」

そう言うと、コテンと、私の肩に頭を乗せて来た。

「え...ちょ...」
「酔ってるからさー」

ンフフって小さく笑ってる。
...からかわれてる？

サラサラの髪が、頬に当たる。
社長の香り。

私、この香水の匂いを見付けると、社長を探すようになってしまってるんだよ。
そんな事、想像もしてないでしょ。

「横並びなら、萌える展開いっぱいあるね」
「...そう、かもしれませんね」
「後部座席からじゃ、目も合わせて貰えないけど」
「え...？」
「俺、いーっつもバックミラーでAちゃん見てたのに。ぜーんぜん、俺のコト見てくんなかった」

鼻に掛かった声。
甘くて、耳から溶けていきそうになる。

「でも男目線でなら、結構萌えるゲームになるかも」
「......」
「あ、でもダメだ。ピンクになっちゃう。18 禁だ」

何を考えたのか、ンフフフって楽しそうに笑って

ふ、と顔を上げた。

顔の距離、数十センチ。
二度目の、至近距離。

「ねぇ」
「......」
「やっぱり恋の予感は、全然無い？」

彼の手が、頬を撫でる。

「...私は...」
「うん？」

───相葉くんの新しいオモチャか───

大野さんの声が、頭の中に響く。

「......無い、ですね」

柔らかく私を見てた目が、スゥっと逸らされて

近付いてた身体も、一瞬で離れた。

「そっかー。ダメか！」

アハハ！って社長が笑う。

「ヒロインが運転手のゲームはボツだね！何か他に良い案あったら、教えてよ」
「......」
「シュミレーションは終わりだね！」
「...そう、ですね...」

やっぱり、と思った。

良かった、と思った。

私は試されてたんだから。
最初から『被験者』だったんだから。

あのシチュエーションで恋に堕ちるのかどうか。
その被験者。
そんな私が、「恋の予感は無い」と言った。
実験は失敗。それだけの事。

もし私が、「予感どころか本当に社長に恋してしまいました」と言ったらどうなってた？
本気で好きになりました、って。

きっと、彼はあの笑顔で「嘘でしょ？ダメだよ、あれはシュミレーションだよ？」ってけんもほろろに言うんだ。

良かった、と思った。

言わなくて良かったと、思った。