KING【ars M.A】 (ページ12)

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笑ページ12

「終わらせる訳無いでしょ」

トントン、唇をノックし続ける長い指。

身体に力が入って、動けない。
奥歯をギュウって噛み締めたせいで、頭がキンと痛くなった。

「あ...失礼致しました」

急に聴こえた聴き慣れない声に、ビクっとする。
社長も、「おっと」と指を私から離した。

個室の入口に立ってた声の主は、初めて見る人。
理知的な大きな目に、上品そうな口元。
清潔感のある黒髪に、仕立ての良いスーツ。

二宮社長！？と思い、慌てて立ち上がる。

「お邪魔でしたね」
「んーん。気にしないで、翔ちゃん」

...翔ちゃん？
ニノちゃんじゃなくて？

「あ、Aちゃん。翔ちゃんはニノちゃんの秘書ね」
「初めまして。私、二宮の秘書をしております。櫻井と申します」

櫻井さんが、まるで執事さんのように綺麗なお辞儀。

「あっ、初めまして！私AIBER GAMEで社長の運て...」

自己紹介してる最中に、「すっげぇ腹減ったんだけど。オレ、マジ牛丼で良いんだけど」と少年みたいな声が部屋に入って来た。

「高そうな店。いかにもお前が好きそうだよな」

その人は、相葉社長を見てツンと顎を上げた。

「それは相葉社長に失礼ですよ」
「翔ちゃんは誰の味方なの！」
「全身全霊で貴方様の味方です」
「ンフフ」

...可愛い。何だこの人。

「こっちがニノちゃんね。二天堂の社長さん」

相葉社長が、私に言う。
この人が！？

二宮社長が、初めてこっちを見た。

「...何だ、このカワイコちゃんは！」
「えっ！？」

私を指差して、何だかワナワナしてる。

「いつもの塩顔男子はどうした！？クビか！？カワイコちゃんに乗り換えたのか！」
「風間ぽんは、奥さんの誕生日だから帰って貰ったの。このカワイコちゃんは俺の運転手さん」
「運転手が女子！？オレの運転手なんて、毒舌で顔の濃い男なのに...」

「でも松本は、絶世の美青年ですよ」と、櫻井さんが言う。

へぇ、二宮社長の運転手さんは絶世の美青年なんだ...なんて、全然頭に入って来ない！
相葉社長の『カワイコちゃん』に、私勝手に被弾してる！

「とりあえず座ったら？」

相葉社長に促された二宮社長が相葉社長と向かい合うように座り、「翔ちゃんも座んなよ」と言われ櫻井さんは私の向かいになる椅子に座った。

「何を飲まれますか？」

櫻井さんが訊くと

「俺、ウーロン茶で」

と、相葉社長が答え

二宮さんが「飲まないの？」と首を傾げた。可愛い。