Laundry【ars K.N】 (ページ16)

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イページ16

私も、カフェオレを飲む。

甘い。

「話してみる？」
「......」
「オレに話してみる？」

いつもはすぐにスマホを出すのに、今日のカズはまだ出してない。

それどころか、パイプ椅子をズリズリと半回転させて体ごと私に向き合った。

「人に話したらラクになるって、まぁベタだけどよく言うでしょ？」
「......でも...」
「近すぎる人には話せない事も、オレくらいの距離感だったら言えんじゃない？」

カズが、片方の口角を上げて言った言葉に...少し、胸がチクンとした。

そうだ。

私は何も知らないカズの事を好きになってしまってるけど、私達はやっぱり友達でも無い距離感の『顔見知り』

そんな分かり切ってた事にガッカリする。

それは、私の想いが届く事は無いだろうってゆー絶望感にも似てた。

ちょっと前屈みになってるカズが「ん？」って首を傾げる。

「聞いてくれるの？」
「うん。話す事でAの気が晴れるなら、いくらでも」
「......」
「それにオレ、Aより年上だろうし。人生の先輩としてのアドバイス？してやれるかもしんないよ？」

大人だとは思ってるけど...本当に年上だろうか...？って不安になる程に可愛らしい顔で、ニッコリされて

「私...27だけど...」
「うん。大丈夫、やっぱオレのが年上」
「そっか...」
「うん」

カズは、急かす訳でも無く

私が話し始めるまで、コーヒーを飲んで私から目を逸らしてた。

「...人をね、傷付けてしまったってゆーか...気持ちを踏みにじっちゃったかもなぁ...って」
「うん」
「どんな形でも、それまでにどんな理由があったとしても、結果的に誰かに悲しい顔をさせるのは...やっぱりちょっと自分も落ち込むね」

別れ際、元カレが見せた表情を思い出して気持ちがドンと重くなる。

ふん...と口を開けずに、カズが相槌を打ったと思ったら

真っ直ぐ見られて、私が目を逸らしてしまいそう。

「ヨリを戻そうとか、言われた？元カレから」

「へっ！？な...何で...」
「何で分かったかって？」
「...うん...」
「やっぱそうなのね」

口をへの字にしたカズが、「カマかけたんだけど」ってそのままの表情で笑った。

「Aはその元カレとヨリ戻すの？」
「...ううん、断った」
「もう好きじゃないの？」
「うん、好きじゃない」
「でも、Aは凹んでんだね」

カズが、あまりにも優しい顔をするから

何だか分かんないけど、その顔を見るのが辛くなって来て

カフェオレをグイっと飲んだ。