Laundry【ars K.N】 (ページ17)

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ゴページ17

「やっぱり、一度は付き合ってた人だから...」

カズを見ないようにして、話を続ける。

「できれば、傷付けたくなかったなぁ...って...」
「でも、Aを傷付けた奴でしょ？」
「まぁ...そうなんだけど」
「傷付けたのはお互い様！って思えない？」

ズルズルズル、と椅子が床を擦る音がしたからカズを見ると

彼は、私のすぐ近くまで近寄っていた。

口笛を教えてくれた時くらい。

近くで見るカズの目は、向こう側まで透き通ってるんじゃないかって程に透明な鳶色。

「もっと、自己中になったら良いじゃん」
「自己中...」
「じこちゅー」

『ちゅー』の時に、唇が尖がる。

「モトサヤ断った事にそんな罪悪感持ったままだったら、付け込まれるよ？」
「付け込まれる？」
「また元カレが『やり直してくれ』って来たら、お前どーすんの？」
「え...」
「きっと流されて、これ以上罪悪感を重ねる事にも耐え切れなくてやり直しちゃうんじゃない？ってオレは思ったけど」

否定が出来なくて、俯いてしまう。

「Aは、それで良いの？」

俯いたまま、カズの声を聴く。

「オレは、出来ればAにヨリを戻して欲しくない」

「え...？」

その言葉に顔を上げると、頭にカズの手がフワリと乗せられる。

心臓が痛い位にバクバクして

顔がカァ...っと熱くなった。

「ダメだよ」
「...カズ...？あの...」
「戻んなって」

頭の上の手が、スルリと髪の流れに沿って動いた

と思ったら、グシャグシャって撫でる...ってよりは雑に髪を乱される。

「そんなゲーマーに悪いイメージを植え付けるような奴、絶対にロクなもんじゃねぇよ！」
「え...？」

ケラケラ笑うカズの笑い声と洗濯の終わりを告げるブザーの音で、勝手に甘い流れを想像してしまってた私の頭が我に返った。

「あ...洗濯できた」
「そうみたいね」

ズルズル、とまたカズは椅子を引っ張って元居たな所に戻る。

まだバクバクし続けてる心臓を押さえながら私は立ち上がって、洗濯物を取り出す。

チラっと振り返ると、スマホでゲームを始めてるカズの後姿。

「カズはさぁ...」
「うん？」

背後から声を掛ける。

「彼女に、怒られないの...？ゲームしてても」

彼女居るの？って訊けない意気地の無い私の、精一杯。

返事を待ってる時間が、妙に長く感じる。

「怒られないよ」

こっちを振り返らずにカズが言った言葉に隠された主語を想像して

私は血が出そうな程、唇を噛んだ。