Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ17)

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297.社長室。ページ17

猫部屋を出て、社長室へ向かう。

......話って何だ...

.........クビ...しか考えらんない...

だって、櫻井さんにとって大切なのは私なんかじゃ無くて智さんだ。
だったら智さんに気持ち良くお仕事して貰う為に、私のクビをチョンパしちゃうのが一番な気がする。

ハァァ...と大きな溜息が出て、余計に気分が滅入ったから「今の溜息じゃないし」と心の中で自分に訂正。

社長室の前で姿勢を正して、ノックを二回。

「高野です」

そう言えば、中から「入って」と返事。

「失礼します」

社長室に入ると櫻井さんは電話中で、目の動きだけでソファに座るように促された。

「...失礼します」

小さく言ってからソファに浅く腰掛ける。
櫻井さんは耳と肩でスマホを挟んで、PCを叩きながら喋ってる。
その最中にも、傍らに置いてある内線電話が鳴った。
チラとそっちを見て、片目をキュっと顰めてる。

「出ましょうか...？」

私が立ちあがると、申し訳無さそうに「サンキュ」を口パク。

電話に出て要件を聞きメモ帳に書いてると、櫻井さんの電話が終わったらしくスマホをデスクに置いてこっちを見た。

受話器を置くと「何だった？」と訊かれる。

「デザイン部の知念さんから、明日の打ち合わせに持って行く資料が出来てるとの事です」
「そう、じゃ後で確認に行くか...あ、座って？」
「あ、はい。失礼します」

私はまたソファに戻って、櫻井さんはいつかと同じように一人掛けのソファにポスンと沈み込んだ。

「ごめんな、朝っぱらから呼び出して」
「いえ...」
「実はさ、先週末か。智くんと飲みに行って話したんだよ、俺。Aとの事ね」
「...はい」
「まぁ、何だかんだ色々と話して...智くん的には平気らしいんだけど、Aがキツいだろうって事になったワケ」

唇に指を添えながら話す櫻井さんを、ただ黙って見る。

「それで、社長として？うん...Aにはもう智くんの秘書はさせられないなと思って」

意志の強そうな眉毛が、ちょっとだけ歪んだ。

「...そうですか」
「うん」
「...今まで、本当にお世話になりました。ありがとうございました！」

立ち上がって、頭を下げる。
だって、櫻井さんには本当に良くして貰えた。

「えっ！？何、A辞めんの！？」

頭を下げてる私に櫻井さんが焦ったように声を掛けて来る。

「...え？」
「いやいや、辞められたら困る！」
「...はい？」

彼は「座って座って」と両手を上下にパタパタさせてる。