Clear‐Crane‐Crime 8th【ars M.A】 (ページ15)

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260.確認。ページ15

どうして...？

改札を出てすぐ立ち止まってしまった私に、後ろから来た人が迷惑そうに舌打ちをする。
誰かと、トン、と肩がぶつかる。

「お姉さん、邪魔になってるよ」と、大学生らしき男の子に言われてやっと体と頭が動き始めた。

「あ...ごめんなさい！」

慌ててそこから移動する。

さっきまで見てた方に、もう一度目をやる。

柱に凭れた、白いコートの女性。
長い髪は、やっぱり緩く巻かれてふわりと彼女の肩に掛かる。

その視線はキョロキョロと、定まっていない。
誰かを探しているように、動いている。

どうして、伊織さんがここに居るのか分からない。

「...雅紀くん...」

雅紀くんに会いに来た...？
でも、彼に会うなら駅よりも病院の方に行った方が良い。
この時間ならもう診療時間も終わってる。

でももし、ここで雅紀くんと待ち合わせてたりしたら...？

自分が出した考えに、胸をドンと殴られたみたいで
頭を振って、「無い無い...」と否定した。

「そうだ...」

私はスマホを出して、雅紀くんに電話を掛けた。

「...もしもし？」

数回のコールの後、電話に出た雅紀くんはちょっと疲れてそうな声。

「あ...急にごめんね？」
「ううん、何かあった？」
「何も、無いんだけど...雅紀くん、今何してるのかなぁ？と思って」
「今？フフッ」
「何？」
「お風呂入ろうと思ってたから、裸だよ」

アハッ、って楽しそうに笑ってる。
その言葉に嘘は無さそうでホっとしたと同時に、少しでも疑ってしまった自分に嫌気がした。

「そっか、邪魔しちゃったね」
「Aちゃん？」
「うん？」
「どうしたの？」

駅に伊織さんが居る...なんて、言えない。

「...ううん！何か疲れちゃったから、雅紀くんの声聴いたら元気になれるかなー？と思って」
「元気になれた？」
「うん、なった」
「俺の裸を想像したらもっと元気になれるんじゃない？」
「えー、余計疲れちゃうよ」

何でー！って、また笑ってる。

「じゃあ、もうお風呂入ってね。裸のまんまだと風邪ひいちゃうから」
「うん。...ブエックシュ！」

豪快なクシャミ。

「さむっ...じゃあ俺、お風呂入るねー」
「うん、またね」
「またね、おやすみ」
「うん。おやすみ」
「...うん、俺も元気になった」

通話を切って、きっと彼は「さっむいさっむい」なんて呟きながらお風呂場のドアを開けてるんだろうなぁ...って想像すると、少しだけ笑えた。

伊織さんはさっきまでと同じ場所に立ち

まだ誰かを探してる。