Clear‐Crane‐Crime 5th【ars M.A】 (ページ6)

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146.しゃがみ込む。ページ6

病院を出てすぐそこの角を曲がった瞬間に、「あぁぁ...」と頭を抱えながらしゃがみ込んでしまう。

別に言わなくっても良かったんじゃ無い？ってゆー後悔。

だけど、自分だけ黙ってるってのも違う気がした。

と、言うよりも...

私も同じ罪を抱えて、同じ痛みを味わった事がある事を伝えたいと

思ってしまったのかもしれない。

ちょっと振り返る。

先生が追い掛けて来るなんて事は期待してなかったけど、それでもやっぱり誰も来ない道に寂しくはなった。

しゃがみ込んだまま、鞄の中を覗くと折鶴が目に入って何とも言えない気持ちになって

ハァ、と溜息を吐きながらその近くに入ってたスマホを出して発信履歴から電話を掛ける。

数度のコールの後に、通話相手が出た。

「もしもし？」
「あ、ミオ。ごめんね、こんな時間に」
「別にこんな時間って程遅くないけどね」

電話の向こうでミオがケラって笑う。
確かにまだ22時にもなって無かった。

「どうしたの？何かあった？」
「何かーってゆーか...今週末、暇かなー？って思って金曜の夜とか」
「うん、暇ー。久々に花金しちゃう？ってゆーお誘い？」
「そう！花金しちゃお！」
「だったらMIYABI行こうよ！」

その店名に妙にドキっとしたせいで、言葉が詰まって「ング」って喉が鳴った。

「何？今、蛙が潰れたみたいな声したけど」
「...私の声だわ」
「フフッ、じゃあ金曜の20時頃にMIYABIの下で待ち合わせで良い？」
「うん、分かった」
「潤さんのお顔拝まなきゃー」

ミオがもうすぐ人妻になるとは思えない位にウキウキした声で言うから、「達也さんに怒られないのー？」ってからかうと「え？今、隣に達也居るけど？」なんて言うもんだから何だか惚気られた気分。

「じゃ、金曜ね！」
「はーい、バイバイ」

先生との事をミオに相談したかったんだけど、MIYABIだとちょっと落ち着かないかな...。
でも、別に潤さんの前で話す訳じゃ無いし大丈夫か。

ってゆーか、私ミオに先生の正体まだ明かしてないな...
それでどうやって話せば良いんだろう...。

「うーん...」

新たな問題発生。
相談すら難しいって何ごと。

とりあえず足がジンジンして来た。
このしゃがみ方に慣れなきゃ、智さんの横に座って窓の外を見るのは大変なのになかなか慣れられない。
別に業務では無いんだけど。
何となく朝はそーゆー流れになってしまってる。

立ち上がると、この短時間で痺れてしまった足のせいでフラリとよろけた。