Clear‐Crane‐Crime 5th【ars M.A】 (ページ14)

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154.一生一度。ページ14

「でも...私のそれと先生の恋を一緒にするのは失礼だなと思いました」

頭の上でポコポコ跳ねてた手が止まる。

「私は、先生みたいに『この人じゃなきゃダメだ』って思ってた？って言われると...そうじゃなかった気がして」
「うん」
「別れる時にまぁ、色々とあったんですけどその一連で一気に冷めたんです。ビックリする位、サーッて気持ちが消えて...」
「なるほどね」
「残ったのは、奥様に対する申し訳無いってゆー想いだけ」

二宮さんが頭の手をすっと引いた。

「だから、こんな人間はもう二度と恋なんかしちゃいけないって決めてた...んですけど...」
「相葉さんを好きになってしまった、と」
「.....」

ハァ...と、自分の意志とは関係無く溜息が零れる。

「先生の恋は、一生一度の恋って感じですよね...」

そんな全てを賭けて恋してた人の事を、先生は忘れられたのかな...って思うとまた溜息。

「ま、それを言ったらどの恋だってそうじゃない？」
「...え？」
「どんな恋だって、一生に一度でしょ。その相手と恋するのは一度なんだから」
「屁理屈...」
「うっせーなー、慰めてやってんのに」
「...慰められてたの？分かりづら...」

潤さんが堪えきれないって感じで笑った。

コーヒー牛乳を飲んで、溜息吐きそうな口を自分で塞ぐ。

「でー？相葉さんとはそれから会ってないの？」
「うん...しかも次回の治療が最後なんです...」
「繋がりが無くなっちゃうじゃん」
「...そうなんです」
「まぁ、ミヤビナイト来たら会えるけどね。でも前みたいに独り占めは出来ないかもねー、アイツ人気者だからー」

何か意地悪な顔して二宮さんがニヤニヤ。

「ひっ...独り占めなんて！前だってしてません！」
「あらそう？」
「そうですよ...もう変な事言わないでください」
「でも、2人で会うのは難しくなるって事でしょ？」

そう言われて、そうなんだよね...と思い出す。

「先生、引いたかもしれない...」
「でも子の不倫に？」
「うん...」
「自分もしてたのに？」
「先生のは純愛です」
「いけないと思っても好きになる気持ちを知ってるのに？お前に引くとか、ありえないでしょ」

二宮さんがケッ！て顔して

「お前が好きになった人は、そんな心の狭い人なんですかー？」

私をちょっと睨むように、言い捨てた。

「.....」
「ま、大好きな人と過ごせる二人の時間が最後になるかもしんないなら、後悔しないようにしなよ」

二宮さんの言葉に、潤さんも頷いた。