Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ10)

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115.魅入る。ページ10

「人のモン飲んでんじゃねーよ」

二宮さんが智さんを指さして、クハハッて笑った。

「ほらー、でも子がスネてんじゃん」

智さんに向けてた指を私に向けて、「ねぇ？」ってニィっとする。

「別にスネてませんー」
「でも子...ってAちゃんのコト？」

智さんが不思議そうに二宮さんに訊いてる。

「そ。『でも』が口癖だから」
「Aちゃんが？」

チラッと私を見た智さんが「そうかな」って首を傾げる。

「Aって、雅紀の患者なんだよなぁ？」

ちゃぶ台に頬杖をついてる櫻井さんが言った。

「あ、はい。そうです。近所の歯医者さんに行ったら、先生が...相葉先生でした」
「ふーん」
「...え、どうして...ですか？」
「あー、いや。今、そんな話をしてたんだよ」

な、松潤。って、潤さんに話し掛けてる。

「そうなんですよ。珍しい...ってゆーか初めてだよなって」
「.....何がですか？」

胸のザワザワが戻って来た。
落ち着かない。

「雅紀がベースに女の子上げたの」

潤さんの言葉にザワザワが、ドクドクに変わって

何か、もう、ちょっと気持ち悪い。

その言葉を、どう受取れば良いのか分からないし

どう受け取るのが正解なのかも、分からない。

「ま、フロアではよく女子に捕まってるけどな！」
「とりあえず相葉さんに一晩だけお願いしたいオンナも多いかんねー」
「うっわ、ニノちゃんってばお下品！」
「翔ちゃん、世の中にはオアソビを楽しむオンナも居るのよ」
「ウハハッ！やるねー、オアソビ上等！」

櫻井さんが楽しそうに笑って、畳にゴロンと寝転んだ。
あの人は間違い無く酔ってる。

「あ...私、ちょっと...」

何か、私もクラクラして来た。
色んな事があり過ぎて麻痺してたのか、今更アルコールが回ってきた。

「...お水、貰って来ます」

私が階段の方へ行くと「俺もそろそろ戻るわ」って潤さんが駆け寄って来て

「一緒にカウンター行きましょ」

成り行きで一緒に階段を降りる事に。

フロアに降りて、ブースの方をチラッと見る。

光るたくさんの腕の向こう側

先生も、腕を突き上げる。

つい、立ち止まってしまった。

魅入って、しまった。

潤さんが、私の腕を掴んで高々と挙げた。

驚いてる私に彼は

「楽しまなきゃ駄目ですよ？」

優しく微笑むと

「雅紀ー！」

大きな声で先生を呼んでケラケラ笑った。

音楽にその声は消されたけど、潤さんは楽しそうに私を見下ろす。