Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ35)

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140.デザート。ページ35

金曜日、智さんへの諸々のお詫びとお礼に...とお昼ご飯のお弁当をうまうま亭に買いに行くついでに

その近くにあるパティスリーに寄って、シュークリームを買った。

会社に戻ると、真っ黒な服に戻った智さんがソファに寝転んでタブレットを操作してる。

「ただいま戻りました」
「おかえりー」
「お仕事ですか？」
「ううん、ゲーム」

ニノに教えて貰ったやつー、って長い指をパタパタとタブレットの上で動かした。

私は、そんな智さんを横目にテーブルへお弁当を並べて、お茶を用意。
そうしてる内に、ゲームを終わらせた智さんが起き上がってチョコンとソファに座ってた。

いつものように並んでお弁当を食べて

いつものように智さんは私のお弁当の中からおかずを1個持ってって

いつものように「んめぇ」って目を細める。

「智さん、今日はデザートがあるんです！」

食べ終わったお弁当容器を片付けて、シュークリームの入った箱を智さんの前に置いた。

「おデザ？」
「はい、おデザです」

箱を開けるとそれを覗き込んだ彼は「うまそ！」って子供みたいに笑う。

「しかもこれ、クリームがキャラメル味なんですよ！」
「うそっ！おれの為に作られたシュークリーム！」
「って訳では無いですけどね」
「そぉゆー事にしとこーや」

智さんがシュークリームを手にして、パクリとかぶりつく。

「んまっ！Aちゃん、食べないの？」
「じゃあ、いただきます」

甘い。
甘さが口の中にいっぱい広がる。

───『甘い物ってホント幸せになるよね』───

先生の言葉を、あの笑顔と一緒に思い出して

シュークリームをジッ...っと見詰めてしまう。

「Aちゃん？」
「えっ？あ...美味しいですね！」
「またボーッとしてた」
「アハッ、そんな事は無.....」

否定しようと智さんの方を向くと

思ってた以上に、彼のその顔が近くにあって

「ねぇ、Aちゃん」

智さんの手が、私の頬に触れた。

「口、クリーム付いてる」
「あ...」

慌てて自分で拭こうとすると、頬に触れてない方の手が私の腕を掴む。

「おれが取ったげる」

優しげな目尻が、ゆるっと下がって

その目の中に、驚く程の色が差した。

元々ソファの端っこに座ってた私は、距離を詰めて来る智さんからは逃げられなくて

「あの...智さ...」
「シーッ...」

小さな声で私を黙らせた智さんは、私に顔を近付けながら

綺麗に口角を上げた唇を、薄く開いた。