Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ18)

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123.REBELLION。ページ18

まぁ若い頃から何度も訪れてる街で道に迷うなんて、どう考えても無理で

私達の脚は、真っ直ぐに駅に向かって進む。

「先生は終電大丈夫なんですか？」
「うん、帰らないから大丈夫」
「帰らない？」
「ナイトの日は閉店後に潤くんちに皆で泊まるのが恒例なの」
「へぇ、楽しそうですね！」
「Aちゃんも来る？」
「えぇっ！？」

ベースだけでいっぱいいっぱいだったのに、そんな所にノコノコ行ける心臓は持ち合わせて無い！

「あ！でもやっぱダメだ！あんなゲスい場にAちゃん呼べないや」
「アハハッ、そうなんですか？」
「男が集まって話して盛り上がる事なんて、一個だけだからね」

片頬を上げて笑う先生に、私もニヤっとしてしまって

...今の私の顔は間違い無く下品だったな、とすぐ後悔する。
可愛い女になりたい、なろう、とすぐ決意。

「二宮さんと潤さんとは、学生の頃からお友達なんですよね？」
「うん」
「学生時代も楽しかったんでしょうね！」
「んー...」

想像してたのは「うん」とか「まぁね」とか、そんな返事。
だけど、先生は言葉を続けずちょっと遠くを見てた。

黙ったまま何歩か進んだ時、先生が口を開いた。

「Aちゃんって、子供の頃に親父に診て貰ってたんだよね？」
「あ、はい」
「病院にもよく来てたんでしょ？」
「うん、よく行ってました」
「俺の印象、ある？」

先生の印象は...

有名進学校の学ランを着た男の子。
いつも俯いてて顔がよく見えなかった。

......そうだ、いつも俯いてた。

「別に望んでもなかった『医者の跡取り』で産まれちゃった自分って、運が悪いなーなんて思ってたなー」
「......」
「別に親父は『医者になれ』なんて一言も言わなかったけど、周りの空気がもうそれ以外の職業を許してくれないって感じだったの」
「そう...なんですね」
「俺が小児科医じゃなくて歯科医を目指したのは、ちょっとした反抗？フフッ、結局医者だけどね」

スゥ...って、先生が息を吸い込む。

「毎日、限界超える位勉強してて」
「...うん」
「うちに帰ると、自分は医者にならなきゃって嫌でも思い知らされて」
「......」
「時々、何もかもどうでも良くなって家に帰らなかったりね。そーゆー時に付き合ってくれてたのが、アイツらだったの」

先生の表情が、ユルっと綻んだ。

「だから色々あったけど、学校生活自体は楽しかったよ」
「そうですか、何か...うん。良かったです」

本当に良かった、って。
そう思った。