9-2.噂 ページ2
空気がわずかに緊張を帯びた。
「円堂監督がどこかへ出かけることも、増えたよね」
「ああ」
「……どう思う? 円堂監督、最近難しい顔してるし。みんな心配してて……」
抽象的な質問になってしまったが、それ以上どう聞けばいいのかわからなかったので、私は剣城くんの様子を伺った。
「部員に伝えなければいけないことなら、監督は言うはずだ」
そうは言ったものの、彼は自分でもどこか腑に落ちないところがあるような表情をしていた。
彼はまた少し考えて口を開いた。
「それがないなら、自分たちのことに集中しろという意味だと思う」
彼の声からは、自身を納得させるような雰囲気をわずかに感じ取れた。きっと彼も円堂監督や、みんなのことを心配しているのだ。
「……うん。そうだね」
転がっていたサッカーボールを持ち上げた。私が家から持ってきたものだ。買ったのは入部した当初なので、まだ半年も経っていないというのにずいぶん汚れている。
前回の新雲戦ではかなり苦戦したが、次の相手はさらに強くなる。なにせ準決勝だ。
「次はもっとがんばらないと」
「ああ」
日暮れまでまだ時間はある。話している間に体力も戻ってきている。
私と剣城くんは、ゴールに向き直った。
.
数日後。部活を終え帰り支度をしていると、後輩の女子が何やらそわそわした様子で話しかけてきた。
「A先輩、剣城先輩とお付き合いしてるって本当ですか?」
目眩がした。
「どういうこと?」と聞き返したかったのに、出た声は風邪も引いていないのに掠れていて、私は唾を飲みこんだ。
「最近お二人でこそこそ練習してるじゃないですか! 一年の女子の間で噂になってますよ!」
彼女の表情には一切の悪気はなく、思わずこちらが申し訳ないような気持ちになっていた。
多数存在する剣城くんのファンの中には、そういう勘違いをする人もいるということだろう。それに恋愛話は盛り上がる。
「こ、こそこそなんてしてないよ! 剣城くんとは付き合ってるわけじゃないし……」
「えーっ、そうなんですか」
どうして彼女が残念そうなのか検討もつかない。
「……噂になってるの?」
「なってます!」
彼女の元気な返事に私はがっくりと肩を落とした。例の一年女子のことがあってから、そういうふうに見られることもあるのだと思ってはいたが、実際そうなっていることを聞くと怯んでしまう。
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春間(プロフ) - ミリアさん» 申し訳ないのですが、青天以外の小説を執筆する予定はありませんので、今回はご遠慮させていただきます。お誘いありがとうございました! (2021年3月6日 19時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 一緒に合作しませんか? (2021年3月6日 19時) (レス) id: e8a27bc902 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます! 実はイナイレ以外のアニメにあまり詳しくなく……ちゃんと全話観たのはギャグマンガ日和やここはグリーン・ウッドです! (2021年3月6日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月6日 13時) (レス) id: e8a27bc902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2021年2月20日 21時